公民館講座「TPPの動向と日本経済」2012年06月20日

 昨日の午後、山口公民館で公民館講座を受講した。神戸新聞論説委員の藤井洋一氏による「TPPの動向と日本経済」をテーマとした時事講座だった。知人の公民館活動推進員から勧められたこともあるが、山口という比較的農業人口が多い地域で、どんな角度からこの難しいテーマが語られるのかという興味もあった。
 台風の警戒警報の最中の講座にも関わらず会場には30名ほどの受講生の姿があった。1時間30分に渡ってTPPについて基礎的な解説があった。自由貿易拡大の世界的潮流、TPPの歩み、21分野の日本のメリットとデメリット、農業への影響、野田政権のスタンス等が語られた。
 次の点についてなるほどと思った。ひとつは中国という大国がTPPという環太平洋を構成する9カ国の埒外にあるという国際政治の視点からの指摘だった。遅れて参入した超大国アメリカのTPPにかける狙いが透けて見える。今ひとつはこのTPPについての全国紙と地方紙のスタンスの違いである。当然ながら読者の違いが背景にある。全国紙はこぞってTPPに参加すべしの論調のようだ。これに対し農業者等の読者ウェイトの高い地方紙は概ね参加に慎重な姿勢だという。余談風に語られた「消費税」「原発」についての全国紙各紙 のスタンスの相違も興味深かった。消費税については全紙が増税賛成の立場であり、原発再稼働は読売、産経が賛成で朝日、毎日が慎重姿勢とのことだ。地方紙論説委員ならではの情報として興味深かった。
 受講後、あらためてこの問題をどう考えればよいかを自問した。TPPはまぎれもなく市場経済のグローバル化の一環である。それ自体は誰もが抗し難い潮流のように受け止め、TPP反対の立場でも個々の分野や業界での利害からの反対のようにみえる。壮大な実験の果てに域内の自由貿易を達成したEUが今、ギリシャ問題に象徴される混乱と経済破綻のリスクを抱え込んでいる。市場経済のグローバル化自体に危険性はないのか。抗し難い潮流であっても制御可能な仕組みについての検討が不可欠ではないか。グローバル資本主義という怪物が、ひとたび大事故が発生すると制御不能になる原発という怪物にオーバラップしてしまう。人類は、土地も資源も人もマネーも商品として世界的な規模で取引させてしまうグローバル資本主義の時代を迎えてしまった。それによって物質的豊かさを手に入れた半面、自然・環境の破壊、格差社会、国や地域の伝統文化の衰退等の負の遺産を今受取ろうとしている。