逆縁の訪れ(3)故人の姪との対面と「お別れの儀」2024年03月15日

 長男の眠る大久保大和会館の親族控室で目が覚めた。祭壇前でお線香をあげ遺体に声を掛けた。朝食の調達がてら会館周辺を散策した。コンビニで購入したサンドイッチで朝食を済ませ控室で時を過ごした。
 12時前には娘が婿殿と孫娘を伴って到着した。小学2年生の孫娘がおばあちゃんと一緒に故人となったおじちゃんと初めて対面する。無類の子供好きだったが子供に恵まれなかった故人にとっては唯一の肉親の子供だった。緩和病棟入院中に両親の前では決して涙しなかった長男が、面会した妹と姪の姿に涙して感情を露わにした。その孫娘が物怖じしないで手を顔に添えておじちゃんと対面している。故人の心情を思いやって哀しみが飛来した。
 午後1時から遺体が別室に運ばれて「末期の儀」が始まった。男女二人の係員が遺体を清め化粧を施し納棺するまでの手順を、参会者の参加も促しながら粛々と進める。遺体を包む服装には晩年までプレイを楽しんだゴルフウェアが選ばれた。納棺を終えて遺品を棺に納める場面となった。孫娘からおじちゃんの胸元にお手紙が差入れられた。入院中に孫娘が書いた「いつまでも忘れないよ」と記したお手紙である。
 「末期の儀」を終えてあらためてその意味を悟った。一連の手順に近親者たちが関わることで故人の死を実感として受止める機会をもたらしている。いわば近親者の故人とのふれあいを交えた「お別れの儀」なのだろう。
 棺に納まった遺体が再び控え室の祭壇に戻された。祭壇の正面には仕上がった「遺影」が飾られた。2年ばかり前のふくやかだった頃の笑みを含んだいい顔写真である。