失くしたもの2014年08月05日

 我が家のリビングの壁の正面には自作のジャズメンのイラスト画が掛けられている。20歳前後の学生時代の作品である。黒のミューズコットン紙に白のポスターカラーで描いた全紙2枚分のかなり大きなイラストである。学生時代、モダン・ジャズにハマッていた時期がある。とりわけジョン・コルトレーンのサックスが好きだった。子供の頃から多少自信のあった絵心を頼りに色々試行錯誤しながら独自の手法で完成させたものだ。同じ手法で描いた数枚の作品を画像に取込んで個人HPにアップした。http://www.asahi-net.or.jp/~lu1a-hdk/jazz.htm
 イラストの下のリビングボードには、帆船模型がこれ見よがしに置いてある。この模型もまた30歳ころの思い出深い作品である。嫁いでいった娘との今となってはかけがえのない物語が込められている。http://www.asahi-net.or.jp/~lu1a-hdk/hune.htm
 二つの作品に共通するのは、老後のたっぷりある時間をつかって同様の作品作りを再現しようという夢が込められていたことだ。その夢ははかなく消えた。7年前に右手親指に皮膚癌を発症し、右手親指の切除と50日間の入院生活という代償を払って無事帰還した。転移の懸念がある5年間の経過観察期間も卒業した。今や満足すべき日常生活を愉しんでいる。とはいえリビングの二つの作品を目にするたびに、もはやかつての夢が再現できない現実を思い知らされる。大病で失くしたものは右手親指だけではなかった。

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