労働委員会での達成感2010年09月16日

 今日、労働委員会の担当事件で委員会による関与和解が成立した。昨今の個別労使紛争の多い事件の中で、珍しい集団的労使紛争事件だった。外資系持株会社傘下の子会社労組が親会社を含めた会社を「誠実団交応諾義務違反」の不当労働行為の申立てたものだ。団交で争われていたテーマは通勤途上災害を含めた業務上災害補償協定の締結を巡るものだ。昨年12月初めに第1回調査が開始されて以降、7回の委員会を経てようやく辿り着いた「合意」だった。
 団交応諾の命令交付を求める申立てではあっても、審査の過程では可能な限り双方による和解合意が望ましい。この事件に関しては委員会の労使委員が第1回調査から積極的に個別に労使双方のヒアリングを行い和解の糸口を探った。第3回調査からは公益委員と使用者委員が新任委員に交代したこともあり、調査の場では積極的に和解を促す発言を行った。その上で5月の第4回調査では委員会としては次回調査までに和解の流れが見いだせなければ命令交付を前提とした審査計画を策定する旨を通告した。その結果、第5回調査以降は双方に和解の機運が生まれ、最終的に今日の合意となった。
 合意内容は、この間の労使の自主交渉で確認された災害補償規定案を会社が施行する旨の協定を当事者双方に加え、労働委員会委員三者が確認し捺印するものである。労使の自主交渉だけでは得られなかった筈の合意である。調査の過程で双方の抱える事情を聞き取り、双方に伝えながらもつれた糸をほぐした。公正な第三者としての委員会が和解を積極的に促したことの効果も大きかったと思われる。個別労使紛争の和解と異なり、この合意によって組合に加盟していない全従業員にも適用される業務上災害補償の労働条件が確立された。労働委員会機能の社会的役割をあらためて確信するとともに、労働委員会委員という職責の達成感を得られたひと時だった。