逆縁の訪れ(5)告別式、お骨上げ、換骨法要2024年03月17日

 通夜式の翌朝である。大久保大和会館の前日と同じ親族控室で目覚めた。早朝散策に出かけたが、生憎の小雨模様で早々に切り上げた。
 導師の事情も重なり朝9時半からの告別式だった。式場入口には納棺が叶わなかった「ガンダムのプラモデル」「阪神タイガーズの応援グッズ」等の故人の愛用品が飾られた。30人ほどの参列者は昨夜の通夜式とほぼ同じ皆さんだった。
 読経中の参列者焼香の後、弔電が紹介された。30通ほどの弔電の多さに現役ビジネスマンの死の重さを噛み締めた。読経が終わり、参列者の故人との最後のお別れの時がきた。供花の花束が籠に盛られて参会者に渡される。喪主を筆頭に参会者の手で相次いで遺体の周囲に敷き詰められる。多くの人が故人の顔や額に手を置いて別れを惜しまれている。何度も手を添えた私の掌にも冷たさと固さばかりが伝わった。棺の蓋が閉じられ出棺となった。法名立てを持った喪主に続いて遺影を持った私と骨壺を抱いた家内が続いた。その後を参列者の男性数人によって棺が運ばれた。
 10時半に降りしきる雨の中、会館前を棺と喪主を乗せた霊柩車が出発し、近親者を乗せた会館の送迎バスが後に続いた。20分ばかりで「あかし斎場」に到着した。炉の前に棺が運ばれ係員の説明の後、棺が炉の中にスライドし鉄の扉が閉められた。実態のある故人の現世との決別の瞬間だった。
 会館に戻って近親者たちは控室横の部屋で昼食を摂った。最後まで見送ってもらったテニス・ダブルスの相棒だった地元在住の故人の親友にも同席して貰った。故人を偲んだ”通夜ぶるまい”の延長戦の話題が続いた。
 1時過ぎに参列者のマイカーに分乗して「お骨上げ」のためあかし斎場に向かった。炉の前のスペースにキャスターに載せられた鉄のシートが運ばれた。係員が全身の遺骨の解説をした後、参列者が順次備え付けの長い竹箸で骨の片を骨壺に納めていく。納められた骨の頂きに最後に喪主が喉仏を載せてお骨上げが幕を引く。
 再び会館に戻った親族が控室の祭壇前で「換骨法要」と「初七日法要」に集った。住職の読経の後、最後に法話があった。「故人は大樹となって家族を見守ってほしい」という想いで「亮樹」と命名された法名の由来が印象的だった。
 親族の皆さんを見送った後、帰り支度を整えて帰路に就いた。5時過ぎに二泊三日ぶりに我が家に戻った。長男の死と葬祭という忘れ難い非日常の世界からの帰還だった。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック