長男の闘病記④抗癌剤投薬の最後の選択肢2024年04月07日

 長男の癌治療は病状に応じた抗癌剤投与で続けられていた。日常生活は表面的には穏やかに推移していたようだ。
 2023年3月には担当エリアが愛知県エリアから兵庫県エリアに移ったことから住まいも購入済だった明石の戸建て住宅に転居した。念願だった”海の見える我が家”での生活が始まった。その年の6月には社内の成績優秀者の褒賞でドイツへの研修を兼ねた旅行に派遣された。重篤な病を抱えての海外旅行によくぞ会社も認めてくれたものだと感嘆すると同時に、長男の病を抱えながらも表彰されるほどの優秀な業務成績を残したことに感服した。
 2023年の11月に久々に長男が独りで来訪した。近所の三田屋でステーキランチをご馳走してくれた。ランチをしながらあらたまった様子で緊張気味の両親に来意を告げた。現在投薬中の抗癌剤が治療の最後の選択肢であること、そうした状況なので自分なりに遺言書を整理しているが、実家の持ち家処分は長男としての責務なのでその対応は念頭に置いているということだった。
 病状の進行は予測していたとはいえ、あらためて本人から最終段階の病状という深刻な事態を告げられ、少なからず動揺した。今の抗癌剤の効果がなくなれば後は緩和治療という終末期医療に移行するしかないことも知らされた。
 その数日後、長男に以下のメールを送信した。
 「先日は久々に帰省してくれてありがとう。本当に久しぶりの三田屋のステーキランチを美味しく味わいました。ごちそうさま。あなたが自分の苛酷な現実と正面から向き合い、冷静に対応していることがよくわかりました。実家処分の際の長男としての過分の心遣いにも言葉にできないほど有難く受け止めました。本来、父母が子どもたちに伝えるべき遺産問題を息子から伝えられることの哀しさは否定できませんが・・・。現在処方されている投薬が最後の処方薬ということの深刻さに動揺を抑えきれません。残された限られた時間の幾分かでも両親と過ごすことを考えてもらえることを願っています。」

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