異業種交流会「音訳の世界を学ぶ」2009年05月13日

 「音訳」という世界があることを初めて知った。昨晩あった異業種交流会の5月例会は、「音訳の世界を学ぶ」がテーマだった。
 茨木市にあるNPO法人リーディングサービスNの理事・中原尚子さんという女性が講師だった。法人の事業内容は、視覚障害者等の情報弱者に「音訳技術」を通じて「読むサービス」を提供することのようだ。
 例会開始直後に紹介者の会のメンバーから講師の紹介がある。茨木のNPO法人だけでなく、視覚障害者のリハビリテーション事業を行なう「社会福祉法人日本ライトハウス」の専門音訳英語チームでの活動や、日本唯一の視覚障害者向け放送局である「JBS日本福祉放送」での「今日の新聞(朝刊)」と「JBSニュース」も担当されているとのことだった。民生委員として地域の障害者福祉に関わるそうした活動は、個人的にも守備範囲の筈だったが、音訳という言葉自体今回初めて知った。ましてや視覚障害者のリハビリテーション事業や視覚障害者向け放送局の知識など及びもつかなかった。自らの不明を恥じ入るばかりだ。
 講師のスピーチは7時丁度に始まった。冒頭、参加者に「音訳をご存知ですか」と聞かれる。誰もが初めて聞くとの反応だ。視覚障害者が情報を得るための媒体としては一般的には点字が知られている。ところが点字は一定以上の訓練を経なければ読めないし、表現もできない。これに対し音訳は基本的には誰にも可能な情報提供媒体である。
 朗読が文学作品などを感情豊かに読むことに対して、音訳は音訳者の主観を排して、書かれた内容をできるだけ忠実に音声化することが求められる。利用者の求めに応じて、図、表、写真なども含めたあらゆる情報を音声で伝えることだ。どちらかといえばイメージとしてはテレビの副音声や通訳に近い。そんな趣旨の話の後、そばにあったメニューを取り上げて実際にどのようにこれを音訳するかを事例紹介風に説明される。「どれくらいの大きさの、どんな紙に何色の文字で書かれています。どんな写真が載っており、どの献立には『店長おすす』と書いてあります」と言った具合だ。単にカレーライスが○円と読むだけではない。いかに視覚障害者である利用者の立場に立って想像力を働かせながら音読できるかが問われる。そのためには日本語のボキャブラリーの豊富さや説明能力が必要となる。要は、利用者の目になりきることだ。
 この活動を始めて22年になるという中原さんだ。子供の読み聞かせのための朗読の勉強がきっかけだったようだ。その話しぶりから、今や音訳がライフワークのようになっているようにみえる。「ぜひ音訳という活動を知ってください」という想いをこめたメッセージでスピーチが終った。