おばあちゃんと大型犬2011年03月23日

 朝の散歩でいつもよくお会いするご近所のおばあちゃんがいる。民生委員として定期的にお訪ねするお宅でもある。大きな犬の散歩が日課のようである。老夫婦だけのお宅には三匹の同じ種類の大型犬が飼われている。ネットで調べてみるとイングリッシュオールドシープドッグという種類だった。白とグレーの長い被毛に覆われたいかにも愛くるしい犬である。

 今朝もおばあちゃんが少し曲がった腰を庇いながら、大型犬に引きずられるようにして向うからやってきた。先日、挨拶を交わした時には大型犬二匹がお供もしていた。いや、おばあちゃんが二匹のお供をしていたという風情だった。思わず訊ねてしまった。「二匹も一緒で大丈夫なんですか」。「この子らはおとなしくてよく言うことを聞いてくれるんです」と返された。

 そして今朝、私と言葉を交わせるほどの距離に近づいた時、おばあちゃんから待ちかねたように声をかけられた。「この子なんです。いうことを聞かないのは。車や犬が通りかかると突然立ち上がったり引っ張ったりして・・・」。ゴンタな我が子を嘆くような口ぶりに、かわいくて仕方がないという響きが籠められていた。おとなしくお座りしたゴンタがつぶらな瞳でおばあちゃんと私を交互に見つめていた。「お気をつけて・・・」と言葉をかけてお別れした。気になって振り向いて様子をみた。ゴンタが立ち上がりおばあちゃんに抱きついていた。まるで知らないおじさんの前で大人しくしていた子どもが、おじさんがいなくなった途端、お母さんに甘えているかのようだ。

 避難所暮らしを余儀なくさせられている多くのお年寄りのことを思いながら、何気ない日常のこんな風景が保たれていることの幸せを思った。