弟の自分史を甥が完成させた2024年04月06日

 弟の奥さんから封筒に入った冊子が送られてきた。「自分史 無常に生きて」と題された今は亡き弟の「自分史」だった。
 双子の兄弟である私と弟は奇しくも晩年の同じ時期に自分史執筆に着手した。私の方は順調に執筆を重ね2020年3月に完成し自費出版した。弟はほぼ完成に近い段階にまでこぎつけていたが、パーキンソン病を患っていたこともあり、最後の締めくくりの執筆が叶わないまま未完のままだった。
 弟を見舞った際に、見かねて自費出版に向けて執筆済み原稿の校正を手伝うことになった。私の自叙伝は、ある編集ソフトを利用して原稿データを流し込んで編集したものだ。この処理を弟の執筆済みデータでも行なうことでほぼ完成に近い形の校正にこぎつけた。最後のまとめの原稿の執筆前に弟は死を迎え、「自分史」は日の目を見ることがなかった。
 その自分史が送られてきたのだ。差出人の添え状には、弟の長男が私が手助けした校正原稿をもとに弟のブログ記事も追加して手製の「自分史」として作成したと記されていた。手作りの自分史としては中々の出来栄えである。弟の未完の自分史が気がかりだったので、甥がそれを完成させてくれたことに感慨深いものがあった。我が子がそれを成し遂げてくれたことに誰よりも喜んでいるのは弟だろう。