NHKドラマ「清左衛門残日録(第3巻)」2012年09月06日

 レンタルDVDのNHKドラマ「清左衛門残日録(第3巻)」を観た。この巻には第6話「梅咲くころ」、第7話「花のなごり」、第8話「草いきれ」の三話が納められている。
 「梅咲くころ」は、清左衛門が江戸屋敷で用人の重職に就任したばかりの頃に関わりのあった奥女中・松江が、縁談で国元に戻り清左衛門を訪ねてくることから引き起こされる物語である。清左衛門は縁談話が松江の蓄え目当てであることを知り松江に告げ、松江は即座に破談を決める。それだけの単純なお話である。かってのほっそりした容姿が見違えるようにふくやかになって登場する松江役を、ふくやか女優・友里千賀子が演じている。
 「花のなごり」は、原作では「ならず者」と題されている。かって清左衛門が処理した江戸藩邸での収賄事件が冤罪の疑いが出てきた。今尚信頼の厚い清左衛門に藩主から国元での再調査を命じられる。この物語のゲスト出演は冤罪をかけられた半田守右衛門役の斎藤晴彦という比較的地味な俳優だった。
 「草いきれ」は、重い夏風邪を患った清左衛門が、嫁・里江の看護や幼なじみの旧友・小沼金弥との邂逅を通じて老後の切なさや哀しさを実感する物語である。
 何といっても面白かったのは「草いきれ」だった。病でげっそりやつれた清左衛門を仲代達也が見事に表現していた。懸命に看病しても義母には所詮及ばないと思い知らされる嫁役の南果歩も良かった。隠居した年寄りは所詮跡取り夫婦には厄介な存在と言って若い妾を囲う小沼金弥役のゲスト出演・加藤武のベテラン俳優らしい手堅くて味わい深い演技も印象的だった。原作に加えて映像化された作品からあらためて自身の老後の心情を重ね合わされた作品だった。