塩野七生著「ローマ人の物語4」2023年02月07日

 塩野七生著「ローマ人の物語 」の第4巻”ハンニバル戦記・中」を再読した。前巻では、ローマと北アフリカの大国カルタゴとの壮絶な闘いの幕開けが綴られた。地中海の覇権を巡る「ポエニ戦争」である。
 緒戦でローマに大敗を喫したカルタゴに稀代の英雄が登場する。弱冠26歳のハンニバルがカルタゴ支配下のスペインの総督に就任した。スペイン統治と対ローマ外交を周到に進めながら29歳のハンニバルが壮大な戦略の実行に着手する。大軍と多数の象を率いてのアルプス越えのイタリア侵攻という意表を突いた戦略である。イタリアに攻め込んだハンニバルは、トレッピア、カンネ等の戦史に残る大戦に知略と戦術を駆使して勝利を収める。
 読者はこの巻の大半でハンニバルの鮮やかな知略にお付き合いすることになる。それはそれで手に汗握るものがあるがローマびいきの立場からはフラストレーションが募る面もある。
 紀元前210年、ローマの元老院はわずか25歳の若者・スキピオにスペイン戦線の総指揮を委ねることを決定する。第二次ポエニ戦役の舞台に登場したもう一人の天才的武将の登場である。
 この巻の終盤は、スペイン戦線でのスキピオの対カルタゴ戦争の鮮やかな展開が描かれる。ローマびいきの読者の溜飲を下げさせてくれる。