塩野七生著「ローマ人の物語5」2023年02月23日

 塩野七生著「ローマ人の物語 」の第5巻”ハンニバル戦記・下」を再読した。前巻ではローマとカルタゴの地中海世界の覇権を賭けた壮絶な闘いのポエニ戦役前半のクライマックスが描かれた。カルタゴの稀代の英雄にして古代世界屈指の武将ハンニバルの鮮やかな戦いぶりが生き生きと語られた。
 そして迎えたポエニ戦役の後半である。カンネの闘いで完膚なきまでにハンニバルに叩きのめされたローマに、もう一人の英雄スキピオが登場した。第5巻は歴史上稀に見るハンニバルとスキピアという二人の英雄の直接対決のスリリングな展開がテーマである。
 カルタゴのザマの会戦が領有の最終決戦の場となった。著者はこの会戦の緒戦から克明に推移を追って記述する。しかも両軍の布陣の推移の模様をイラスト付きで解説する。そして最終決戦はローマの若き知将が制する。
 この巻の後半は「ポエニ戦役その後」として綴られる。それはポエニ戦役を制した後のローマの地中海世界の制覇の過程の物語でもある。ローマの対抗軸だったマケドニアとカルタゴの滅亡が語られる。