パンデミックが露呈させたパクス・アメリカーナの限界2020年05月08日

 新型コロナウイルスが世界を席巻している。その波及力は、疫病蔓延といった事態を越えて今やパンデミックと呼ばれる人類全体に及ぼす破壊力となって私たちを襲っている。その波及は人類の隅々にまで及び生活の根底を揺るがしている。日常生活の風景が一変し、人類が到達していた文明が覆されようとしているかに見える。
 かつて人類は、その時代の超大国に率いられて世界的な規模の平和を享受するという歴史を刻んできた。パクス・ロマーナ、パクス・ブリタニカ、パクス・アメリカーナといった変遷である。それはその国家の根底をなす価値観や生活様式を多数の民族や国が認め受け入れてきた歴史でもあった。文明の変遷と言ってよい。
 私たちは今、パクス・アメリカーナの終焉期を迎えているのではないか。米ソ両超大国による冷戦を経て1991年のソ連邦崩壊によってパクス・アメリカーナが現出した。それは社会主義に対する自由主義の勝利を意味し、その根底にある価値観である市場原理主義とグローバリズムを一気に拡大させることになった。以来30年を経て、パクス・アメリカーナは様々な歪みと矛盾をもたらした。個人主義の蔓延、声高に叫ばれる自己責任、貧困と格差の拡大、共同体とコミュニティの崩壊、一極集中と過疎化、地域の風土や伝統文化の喪失、豊かな自然の破壊等々。
 コロナ危機とはそうした歪みと矛盾を集約化したものではあるまいか。ウイルスの発生そのものは別にしてもそれを蔓延させたのは人と物流のグローバル化である。また新型コロナ蔓延で社会生活を危機に陥れている要因の多くを市場原理主義とグローバリズムが負っている。経済優先のアベノミクスが感染対策を遅らせ、そのことが逆に経済再生を遠のかせ、国民生活を絶望的な危機に陥れている。小さな政府を標榜する新自由主義的政策が医療・介護の態勢整備を阻み、行政改革の名分で推し進められた政策が行政組織と人材の脆弱・疲弊化を招き、リスク対応は危機に瀕している。
 新型コロナのパンデミックがパクス・アメリカーナの限界を露呈させた。他方で米中の両超大国が覇権を争っている。いずれも強権的でおよそ歓迎したくないリーダーに率いられている。人類は今後いかなる世界と向き合うのだろう。目下の見通しは暗くて辛いものになりそうだ。

コメント

_ 宮崎昭美 ― 2020/05/08 16:08

コロナは世界に何をもたらしたのか?そしてその後世界はどう変わるのか?国にいろいろ求める人たちがニュースで現状を訴えています。今までにない事に人々は戸惑っています。ひとりひとりがどう振る舞うかが問われていると思います。

_ 明日香 亮 ― 2020/05/08 18:35

コロナ危機がかつて経験しなかった事態をもたらし、私たちに様々な場面で前例のない選択を迫っています。選択の判断基準は、各自がこれまでの人生で培った普遍的な価値観に委ねるしかありません。

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