塩野七生著「ローマ人の物語30」2025年01月02日

 塩野七生著「ローマ人の物語30」を再読した。この巻はサブタイトルに「終わりの始まり」と題された古代ローマの”衰亡史”を扱った上中下三巻の中巻である。
 この巻の前半は五賢帝時代の最後を飾る哲人皇帝マルクス・アウレリウスの後半生の物語である。マルクスの後半生はドナウ河戦線を巡る蛮族との闘いに明け暮れた。そして冬の休戦明けを目前にした3月早々に軍団前線基地でマルクスは重篤な病に倒れる。病室に招いた息子のコモドゥスと主だった将軍たちに向かってマルクスは「コモドゥスの支持」と「ゲルマニア戦役の続行」を遺言として託した。
 この巻の後半はマルクスの後を継いだ皇帝コモドゥスの物語である。12年もの治世にもかかわらずわずか100頁にも満たない記述であることが彼の治世の軽さを物語っている。
 端的に言えば彼は皇帝としての”統治”をほとんど顧みなかった。父親の遺言にもかかわらずマルクスの死亡直後から戦役の終了を主張する。ローマにとって蛮族との屈辱的な講和条約は、結果的にその後の60年もの平和をもたらす。
 幸運な平和の下でコモドゥスは競技等の詩的な好みの生活を満喫する。顧みなかった”統治”は代替者に任せきりにする。初めの5年間は近衛軍団長官ペレンニスに、ペレンニスが皇帝の召使クレアンドロスの陰謀で殺害された後の4年間はクレアンドロスに委ねている。そのクレアンドロスは賄賂と蓄財の4年間の被害の怒りの矛先として民衆の抗議のデモ隊によって殺害される。そしてコモドゥスもまた愛妾やその召使たちによって暗殺され31歳の生涯を終える。

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