オバマ大統領のチェンジに向けた大きな一歩2010年03月24日

 オバマ大統領が歴史的な勝利をおさめた。昨日、大統領は上下両院が可決した医療保険改革法案に署名し、同法が成立したのだ。新政権がめざした「チェンジ」の難産の末の最初のそして大きな一歩だった。
 8年間のブッシュ政権が、アメリカ国民にどうしようもない閉塞感をもたらし、直前にはその経済政策の無策が歴史的な金融危機をもたらした。超大国アメリカのその一国主義と独善的なグローバリズムが世界中に憎悪と格差を撒き散らした。間違いなくアメリカはチェンジを求められていた。そしてバラク・オバマという男が見事にその負託に応えて登場し超大国のかじ取りを委ねられたのだ。
 今回の医療保険改革法の成立によって先進国で唯一なかった「国民皆保険」制度が事実上導入され、米国の医療保険制度は歴史的な転換を遂げることになる。歴代民主党政権が挫折を繰り返してきた国民皆保険制度がここにようやく実現にこぎつけた。それはグローバル資本主義の牙城での伝統的な「市場経済」と「自己責任」による医療保険制度の抜本的な修正を意味する。オバマが掲げたグローバル資本主義の修正路線の具体化であり「政権交代の意味」である。苦難の道を正しいと信じて突き進んだ末の勝利だった。
 ひるがえって我が国でも政権交代が実現した。背景には、小泉政権以来の自公政権の市場原理主義的政策が未曽有の格差社会を生み出し、医療や介護の現場を荒廃させ、地方の疲弊を招いているという現実があった。小泉改革がめざした「市場原理」「自己責任」を軸とした新自由主義思想に対する国民の審判であり、本質的にはアメリカでのオバマによる政権交代と同じ潮流にある。
 ところが鳩山新政権のもたつきと体たらくぶりは目を覆うばかりである。「苦難の道を正しいと信じて突き進む」姿が見えない。新政権に課せられた歴史的な潮流を見据えた路線や枠組みの提示がない。目先の選挙第一主義の小沢手法が政権全体のイメージを作り上げてしまっている。自民党の混乱ぶりも今なお続く。政権交代可能な健全な二大政党制の定着は、我が国の政治風土では見果てぬ夢なのだろうか。