宮水学園・文楽解説と弾き語り2012年01月18日

 北部・塩瀬の宮水学園の第8回講座の日だった。今回は、文化NPOなにわ創生塾理事の山下孝夫さんの「文楽解説と弾き語り(文楽入門編)」をテーマとした講座である。会場の塩瀬公民館講堂いっぱいの受講生の前に三味線を抱えた着物姿の女性とともに講師が姿を現した。女性は弾き語りの師匠・野澤松栄さんで講師のスピーチの前後に「壺坂観音霊験記」などの弾き語りをしてもらった。
 講師の山下さんは、飄々としたなかなか味のある人物だった。永年のファンとしての文楽に関する造詣は深くて広い。日本画の趣味を活かして描いた何枚もの文楽人形の頭の絵を見せながらの解説だった。その時々の頭の口上を声色(こわいろ)で演じてみせるという趣向も愉しめた。以下、講師の縦横無尽の語り口での解説から気に入った内容を紹介してみよう。
 「文楽はなぜすたれたか。著作権がなく台本を歌舞伎にパクられた。役者というスターを擁する歌舞伎に芸だけが頼りの文楽は人気をさらわれた」
 「能とならんで文楽は芸が分かると面白くなる日本の芸能の代表である。能は30回見なければ分からないが文楽は10回みれば分かる。但し多くの人は3回で止めてしまう」
 「なぜ赤字なのか。人形一体に3人が必要で人件費がかかる上、人形は遠くから見えないので劇場を大きくできない。上から覗けない芝居なので二階席も作れない。経営努力の問題とは別にこんな経営上のハンディがある」
 「今の名人は誰か。浄瑠璃太夫の豊竹咲大夫、人形遣いの桐竹勘十郎、三味線の鶴澤清治ではないか。文楽界きってのイケメンで芸は下手な某太夫も気になる」(個人的な意見としてもズバリ固有名詞を出してはばからない点は見事な根性!)
 「台本の思考には江戸期の大阪町人の気風がある。武士社会の権威主義を茶化したりうっぷん晴らしをする風土だ。『忠臣蔵』なども見方によっては、ひとりの老人を47人もの大の男たちが寄ってたかって殺してしまったとも言える。被害者はどんな悪人だったかと言えば、ちょっとばかりイケズだっただけではないかということになる」(なるほど、文楽に流れるそうした反骨精神を初めて知った)
 最後に、弾き語りのお師匠さんの三味線カラオケで参加者全員が童謡・ふるさとを合唱した。会場出口では講師が描いた30数枚の人形の頭絵が参加者にプレゼントされた。もちろん私も頂いた(貼付画像)。何ともサービス精神旺盛な講師だった。この種の講座は往々にして当たり外れがあるものだ。今回ばかりは「大当たり」というほかない。