ピケティ氏著作と国会での格差論争2015年01月30日

 今日の朝刊で大手新聞各社は29日の国会での与野党の論戦を伝えている。民主党の長妻代表代行が、話題のピケティ氏の著書「21世紀の資本」を材料に、首相に「格差問題」を追及したことを巡る論戦である。
 日本は小泉政権の新自由主義的施策の導入で一気に格差社会が増幅した。2009年の民主党政権の誕生は、多分にこの格差社会をうみだした政権に対する国民の審判だったという側面を持つ。ところが民主党政権は稚拙な政権運営でわずか3年で幕を閉じた。この間、格差拡大は一時的に抑制されたものの構造的には維持されたままだった。
 民主党政権の後を受けて、第二次阿倍内閣がアベノミクスを引っ提げて登場した。アベノミクスとは経済成長至上主義の新自由主義的施策にほかならない。実際に政権誕生後2年余りを経て日本社会の格差は増幅されたかに思える。経済成長と格差拡大は表裏の関係にあるという実感がある。
 そんな時だ。フランスの経済学者トマ・ピケティ教授の「21世紀の資本」という2013年発行の著作が世界で100万部、日本語版でも10万部以上を売り上げたという。その主張の端的な骨子は「資本主義は自動的に持続不可能な格差を生み出す」というものだ。経済成長と格差拡大は表裏の関係にあるという実感を見事に裏づけられた気がした。
 資本主義の危うさを説く著作は既に数多く発表されている。このブログでも半年前に、水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」の書評を更新した。http://ahidaka.asablo.jp/blog/2014/08/03/7404371 資本主義の危機に対する処方箋的な著作についても、広井良典著「定常型社会」を取り上げた。http://ahidaka.asablo.jp/blog/2014/09/04/7428289
 格差社会の増幅という社会の根底を揺るがしかねない危険な潮流が、経済成長の名のもとに蓋をされていはしまいか。今朝の朝刊の広告欄にはトマ・ピケティ著「21世紀の資本」や水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」が大きく掲載されている。格差拡大に対する読者の関心の高さの反映とも言える。政権与党寄りのスタンスをとる読売新聞でさえこうした広告を一面に掲載するご時勢である。蓋をされていた格差社会の構造的な実態にようやく光が当てられようとしている。