塩野七生著「ローマ人の物語13」2023年08月18日

 塩野七生著「ローマ人の物語13」を再読した。古代ローマの英雄であるユリウス・カエサルシリーズの第5巻(最終巻)である。ユリウス・カエサルのシリーズ最終巻ながら本巻にはカエサルはほとんど登場しない。それでいてカエサル亡き後のカエサルの存在感が見事に描かれている。
 前半の章は「三月十五日」と題され暗殺当日から暗殺の首謀者たちの終末に至る描写を克明に追っている。これを通じて暗殺の背景であるカエサルが目指した新たな国家観と共和政体を信奉する元老院議員グループとの葛藤を浮かび上がらせる。
 後半の章はカエサルの後継者を巡る権力闘争がテーマである。それはローマ国家を二分した十余年に及ぶ内乱でもあった。一方の当事者はカエサルの副官だった40歳のアントニウスで、もう一方はカエサルの養子である21歳のオクタヴィアヌスである。二人の争いにはアントニウスの愛人であるエジプト女王・クレオパトラも加担する。このことがアントニウスの政治性の欠落を象徴しており、ローマ市民の圧倒的な支持をオクタヴィアヌスにもたらす。
 アントニウスとクレオパトラをともに自死に追い込んで抗争の決着をつけたオクタヴィアヌスはローマに凱旋する。カエサル亡き後のローマに誕生した唯一無二の権力者の誕生であり、それは帝政ローマの実質的な始まりを意味することになった。