さらば立ちション!亭主が白旗を掲げた日2015年09月03日

 家内が欠かさず観ているTV番組のひとつにNHKの「ためしてガッテン」がある。別々にテレビを観るほどの夫婦仲でもないのでしばしば一緒に観る羽目になる。昨晩のこの番組のテーマは「家族が涙!トイレ問題 大解決SP」だった。始まる前から家内が「一緒に観なアカン」と言い募る。嫌な予感がした。
 冒頭から、「家庭の洋式便器における『男性の立ち小便』を徹底検証する」とアナウンスされる。このテーマがどこでも夫婦間の大きな紛争のネタになっており、離婚原因にまでなっている場合もあると恫喝される。
 ひとごとではない。身につまされるテーマである。我が家でもリタイヤ後、家内は亭主の立ちション被害を露骨に主張するようになった。自分でトイレ掃除をするか座って用をたすかと、しばしば選択を迫られている。これまで辛うじてその攻撃をしのいできた。こんないきさつでは一緒に観ることすら拒否すれば火に油を注ぐことになりかねない。観念して一緒に観ることにした。
 洋式トイレでの立ちションによる尿ハネの実験映像が流される。壁や床に目に見えない細かな尿滴が無数に飛び散っている。予想以上にトイレを汚し悪臭を放っていることが一目瞭然である。便器の外に漏れないよう注意すれば問題ない筈という私のこれまでの主張は根拠を失った。小便の便器の中の狙いどころによる尿ハネの違いも紹介される。「奥」「水溜り」「サイド」「手前」「便器を跨いで真上から水溜り」の順で尿ハネ被害は大きい。便器の手前に立って行うのでなく跨いで真上からという不自由な姿勢がベターなのだ。米国の物理学者の「尿ハネしないおしっこの法則」が紹介される。何のことはない便器の正面か水面に12cm以内の距離で放尿せよというのである。この法則を実践するには便器を抱きしめるように座ってするほかない。
 ここにきて番組の意図は明らかになった。尿ハネを失くすという課題の解決は、座って小用するという選択肢しかないことを世の亭主族に迫っているのだ。この番組の大多数の視聴者は主婦に違いない。プロデューサーは視聴者の期待に見事に応えている。ひょっとすれば女性プロデューサーの陰謀かもしれない。
 それでも番組を観終えた亭主族は自らの敗北を思い知った筈だ。少なくとも尿ハネはマズイという最低限の妻への誠実さを持ちあわせる限りは、立ちション続行には自身のトイレ掃除を甘受するしかない。さもなければ「座ってする」という選択肢を受入れるほかはない。
 番組終了を待って小用に立った。そして画期的な初めてのスタイルで小用を敢行した。立ちションこそが男のプライドというメンツも沽券も、トイレ掃除回避のためには放棄するという選択だった。
 9月2日、ついに永年の夫婦の根深い抗争に決着がついた。さらば立ちション!亭主が白旗を掲げた日だった。

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