試される日本の民主主義2009年09月24日

 政権交代後、「八ッ場ダム建設中止」問題が内政の最大の焦点として浮上してきた。
 昨日、前原国土交通相が就任後初めて建設予定地を訪問した。予定された住民との意見交換会には、中止方針に反発する住民側の姿はなかった。57年もの長きに渡って国の政策に翻弄され続けた住民の心情は想像に難くない。国交相は政策変更がもたらす住民への多大な迷惑を陳謝したものの、中止方針の白紙化はできないと明言した。
 自民党長期政権が内在させてきた我が国の公共事業の在り方の構造的な矛盾が、政権交代というフィルターを通して一気に露呈してきた。一旦決めれば、どんな環境変化があろうが変更が許されない仕組みが、どれほど莫大な税金の無駄遣いを産み、どれほど多くの国民生活に無用の犠牲を強いてきたことか。
 新政権の八ッ場ダム建設中止の方針は、単に八ッ場ダムの建設の是非を問うだけのものではない。公共事業のそうした構造的な矛盾を抜本的に改める上での試金石でもある。それだけに白紙化に応じられないことを苦しくとも明言した国交相の姿勢は見事である。建設を決めた当時の治水や水利用のニーズはもはや大きく減退している。そのことを冷静に受け止めた上で政策を確定し、地元住民の心情や生活利便に対応するほかはない。
 公共事業の在り方や、政権交代に伴う重大な政策変更の国民との合意形成の新たなルールづくりが問われている。今、試されているのは我が国が培ってきた民主主義そのものの成熟度ではないか。