塩野七生著「ローマ人の物語17」2024年02月21日

 塩野七生著「ローマ人の物語17」を再読した。この巻は初代ローマ皇帝・アウグストゥス亡き後の4人の「悪名高き皇帝たち」の第1部・皇帝ティベリウスの物語である。
 前巻の「ローマ人の物語18」の書評で「21歳年下の配偶者の連れ子であるティベリュウスは当時のローマ国家で最も期待された望ましい人材だった。このティベリュウスへの後継者指名が、結果的にその後の帝政ローマの平和と繁栄をもたらすものとなった」と綴った。私にとって2代皇帝ティベリュウスの評価は高く、決して「悪名高き皇帝」ではない。軍事にも政治にも優れた手腕を発揮した有能な皇帝だった。
 それにもかかわらず裏表紙に「4皇帝は庶民からは痛罵を浴び、(略)史家からも手厳しく批判された」と記載されているのは多分にティベリュウスの性格に負うところが大きい。謹厳実直過ぎる性格は庶民には好感されない。庶民受けを狙った剣闘士の闘技会をも催すこともなく、慶事に当たって庶民に報奨金をばらまくこともなかった。初代皇帝アウグストゥスが覇権確立のために行ったそれらの手法を帝国の財政重視の視点で厳しく律したと言える。
 カエサル、アウグストゥスに続くティベリュウスの存在抜きにはローマ帝国の盤石の基盤を成し遂げられなかったと思う。