追憶「ローマ人の物語紀行」④ローマ世界とEUの挑戦2024年02月09日

 ソ連の崩壊以降、唯一の超大国アメリカによるパクス・アメリカーナが現出した。グローバリズムに代表される一神教的なアメリカ的正義が世界を駆け巡り、究極の一神教であるイスラム世界と衝突する。パクス・アメリカーナ(アメリカによる平和)の危うさが「文明の衝突」を招いていないか。
 ヨーロッパでかってない壮大で画期的な実験が数十年に渡って続けられてきた。今、欧州憲法批准という最終局面を迎え、フランス、オランダの国民投票は反対票が過半数を占めるという生みの苦しみを味わっている。EUのこの壮大な実験を可能にした精神風土に、多神教のローマ世界の遺伝子を読み取ることはできないだろうか。多様な価値観と文化と言語とイスラム教をも包含して尚、統合を目指すヨーロッパの精神風土に、アメリカ的一元主義に代わる人類の知恵を期待したい。