NHK特集ドラマ「定年オヤジ改造計画」 ― 2022年07月30日
郷ひろみが久々に主演するNHK特集ドラマ「定年オヤジ改造計画」を観た。リタイヤオヤジのセカンドライフは個人的にも関心の深いテーマであり、自費出版した自叙伝でもテーマのひとつとして綴っている。ドラマは私のセカンドライフとオーバーラップするように展開し、興味深く共感しながら2時間を過した。
観終えてまず思ったのはかつてのアイドルである大スターが、久々に主演を演じた役回りが”定年オヤジ”だったという落差である。実年齢66歳なのだから定年オヤジも役不足でない。ただ郷ひろみの多くの女性ファンには違和感を覚えながら観たことだろう。演技についてもどこか地に足がついていない感じが否めないのも大スターと定年オヤジの落差の故なのだろうか。
亭主の定年がしばしば引き起こす”夫源病”が登場する。思わず一緒に観ていた家内に聞こえるように呟いた。「反対の”妻源病”もあるのに・・・」。定年オヤジの夫婦間の葛藤を描いたドラマである。そんなドラマを夫婦二人で仲良く観ている我が家の安泰ぶりに安堵した。
観終えてまず思ったのはかつてのアイドルである大スターが、久々に主演を演じた役回りが”定年オヤジ”だったという落差である。実年齢66歳なのだから定年オヤジも役不足でない。ただ郷ひろみの多くの女性ファンには違和感を覚えながら観たことだろう。演技についてもどこか地に足がついていない感じが否めないのも大スターと定年オヤジの落差の故なのだろうか。
亭主の定年がしばしば引き起こす”夫源病”が登場する。思わず一緒に観ていた家内に聞こえるように呟いた。「反対の”妻源病”もあるのに・・・」。定年オヤジの夫婦間の葛藤を描いたドラマである。そんなドラマを夫婦二人で仲良く観ている我が家の安泰ぶりに安堵した。
英雄たちの選択「北条時頼」 ― 2022年04月09日

2カ月ほど前に高橋克彦著「時宗・全四巻」を再読した。このブログでの書評で「時宗以上に時頼の偉大さを痛感した」と記した。その北条時頼が私がしばしば好んで観るNHKの「英雄たちの選択」に取り上げられた。「将軍か 執権か 鎌倉幕府・北条氏の戦略」というタイトルで描かれたドキュメンタリー・ドラマである。鎌倉執権体制を固めた時頼が、それを盤石のものにするため将軍職を、「自らが担うか」「天皇の親王を迎えるか」という選択を迫られたというテーマである。
視聴してみて思ったのは、映像としての評価は別にしても時頼の実像に迫る内容としては物足らなさを感じた。作家・高橋克彦が文庫本2冊に渡って描いたその実像は多角的でリアリティに溢れた共感があった。文庫本2冊の著作にわずか1時間の番組が到底及ばないことは当然だろう。それにしても時頼を描くのに「将軍職を巡る選択」というテーマ自体が無理があると思った。時頼の評価はやはり鎌倉幕府の執権体制の確立と蒙古襲来に備えた国内態勢づくりにあると思う。
切り口の違いが人物像の描写に大きく関わっていることを思い知らされた番組だった。
視聴してみて思ったのは、映像としての評価は別にしても時頼の実像に迫る内容としては物足らなさを感じた。作家・高橋克彦が文庫本2冊に渡って描いたその実像は多角的でリアリティに溢れた共感があった。文庫本2冊の著作にわずか1時間の番組が到底及ばないことは当然だろう。それにしても時頼を描くのに「将軍職を巡る選択」というテーマ自体が無理があると思った。時頼の評価はやはり鎌倉幕府の執権体制の確立と蒙古襲来に備えた国内態勢づくりにあると思う。
切り口の違いが人物像の描写に大きく関わっていることを思い知らされた番組だった。
英雄たちの選択”内藤湖南” ― 2022年03月19日
よく観るテレビ番組のひとつにNHKの「英雄たちの選択」というドキュメンタリー番組がある。先日の番組は「千年のまなざしで中国をみよ 内藤湖南が描いた日本と中国」というタイトルだった。
内藤湖南という人物は知らなかったが、”千年のまなざしで中国をみよ”というキャッチコピーに惹かれた。習近平という傑物の独裁者を得た中国は今やプーチン大統領率いるロシアと並んで国際社会に圧倒的な存在感で不吉な影を落としている。そんな中国を単に独裁国家、価値観の異なる社会として切って捨てても意味はない。可能な限り正確な実像を理解する必要がある。そんな気分にドンピシャの番組だった。
番組の紹介記事には次のような解説があった。「明治から昭和を生き、日本の中国史学の礎を築いた内藤湖南。湖南は中国の歴史を千年さかのぼり、社会に通底する特質を見抜いていった。中国を知るヒントとなる特質とは」。60分の番組を通して次のような感想を抱いた。
番組の中心は内藤湖南が唱えた「唐宋変革論」の紹介である。唐代と宋代の間に起きた大規模な変革が中国史を画期的に変えたという説である。唐代以前を貴族中心の時代と位置づけ、それに続く宋代では、皇帝に並んで庶民が政治・経済・文化の中心になると解釈される。番組では内藤湖南が見抜いた中国の本質とは「皇帝の強大な権力と自立した平民社会である」と紹介する。中国という途方もない国土と民の統治には皇帝の強大な権力だけでは不可能である。底流にある民の伝統的な自治組織の存在を抜きには困難である。それでも皇帝が代を重ねるにしたがって不可避な歪んだ統治に反発する民の反発力が王朝交代を招いてきた。
今日、中国共産党という王朝が習近平という皇帝に率いられて世界一の人口を持つ国を統治している。かつての王朝がなしえなかった膨大な民の個々の統治はITという技術によってきめ細かく補足され、共産党という強固な官僚組織がそれを支配している。
今、日本や世界が向き合わなければならない中国とは、内藤湖南が指摘した本質を身にまとった中国である。
内藤湖南という人物は知らなかったが、”千年のまなざしで中国をみよ”というキャッチコピーに惹かれた。習近平という傑物の独裁者を得た中国は今やプーチン大統領率いるロシアと並んで国際社会に圧倒的な存在感で不吉な影を落としている。そんな中国を単に独裁国家、価値観の異なる社会として切って捨てても意味はない。可能な限り正確な実像を理解する必要がある。そんな気分にドンピシャの番組だった。
番組の紹介記事には次のような解説があった。「明治から昭和を生き、日本の中国史学の礎を築いた内藤湖南。湖南は中国の歴史を千年さかのぼり、社会に通底する特質を見抜いていった。中国を知るヒントとなる特質とは」。60分の番組を通して次のような感想を抱いた。
番組の中心は内藤湖南が唱えた「唐宋変革論」の紹介である。唐代と宋代の間に起きた大規模な変革が中国史を画期的に変えたという説である。唐代以前を貴族中心の時代と位置づけ、それに続く宋代では、皇帝に並んで庶民が政治・経済・文化の中心になると解釈される。番組では内藤湖南が見抜いた中国の本質とは「皇帝の強大な権力と自立した平民社会である」と紹介する。中国という途方もない国土と民の統治には皇帝の強大な権力だけでは不可能である。底流にある民の伝統的な自治組織の存在を抜きには困難である。それでも皇帝が代を重ねるにしたがって不可避な歪んだ統治に反発する民の反発力が王朝交代を招いてきた。
今日、中国共産党という王朝が習近平という皇帝に率いられて世界一の人口を持つ国を統治している。かつての王朝がなしえなかった膨大な民の個々の統治はITという技術によってきめ細かく補足され、共産党という強固な官僚組織がそれを支配している。
今、日本や世界が向き合わなければならない中国とは、内藤湖南が指摘した本質を身にまとった中国である。
アナザーストーリーズ「東大安田講堂事件」 ― 2022年03月03日

NHK・BS放送のアナザーストーリーズ「東大安田講堂事件 」を観た。以下は番組の紹介サイトの記事である。
『1969年1月18日。学生たちが立てこもる東京大学・安田講堂を警察機動隊が包囲した。警察の催涙弾と放水に、火炎瓶や投石で抵抗した学生377人が逮捕、その姿はTVで生中継された。あのとき何が起きていたのか?事件から半世紀、学生の中心メンバーや機動隊員らが、初めて詳細な証言を始めた。発端となった小さな火種はなぜ大きくなったのか?対峙したそれぞれの思いは?極秘資料も踏まえ、安田講堂事件の真相に迫る!』
「東大安田講堂事件」は、私にとっても忘れ難い出来事だった。5年間かけて大学を卒業し大阪の流通企業に採用された。安田講堂の攻防を採用内定者オリエンテーション会場のホテルのテレビで観た。数カ月前には私も大学の構内で学園紛争の只中にいた。以下は私の自叙伝の当時の記述の一端である。
『1969年1月18日。六甲山のホテルでの内定者オリエンテーションに参加した。ホテルロビーのテレビが東大闘争の安田講堂の攻防を映していた。安田講堂には大学サークルの弁論部同期の友人が立て籠っていた。そのシーンを忸怩たる思いで見つめながら「自己否定という幻想」の終焉を苦々しく噛み締めた。』
『1969年1月18日。学生たちが立てこもる東京大学・安田講堂を警察機動隊が包囲した。警察の催涙弾と放水に、火炎瓶や投石で抵抗した学生377人が逮捕、その姿はTVで生中継された。あのとき何が起きていたのか?事件から半世紀、学生の中心メンバーや機動隊員らが、初めて詳細な証言を始めた。発端となった小さな火種はなぜ大きくなったのか?対峙したそれぞれの思いは?極秘資料も踏まえ、安田講堂事件の真相に迫る!』
「東大安田講堂事件」は、私にとっても忘れ難い出来事だった。5年間かけて大学を卒業し大阪の流通企業に採用された。安田講堂の攻防を採用内定者オリエンテーション会場のホテルのテレビで観た。数カ月前には私も大学の構内で学園紛争の只中にいた。以下は私の自叙伝の当時の記述の一端である。
『1969年1月18日。六甲山のホテルでの内定者オリエンテーションに参加した。ホテルロビーのテレビが東大闘争の安田講堂の攻防を映していた。安田講堂には大学サークルの弁論部同期の友人が立て籠っていた。そのシーンを忸怩たる思いで見つめながら「自己否定という幻想」の終焉を苦々しく噛み締めた。』
アナザーストーリーズ「越境する紅テント〜唐十郎の大冒険〜」 ― 2022年02月26日
NHK・BSプレミアムのアナザーストーリーズが矢継ぎ早に興味深い番組を提供している。「越境する紅テント〜唐十郎の大冒険〜」の再放送を観た。
60~70年代に日本の演劇界を揺さぶった唐十郎率いる状況劇場がテーマである。劇場に頼らず、神社の境内や河原にテントを張り、全国各地で芝居を上演して回った。観客に日常に突如出現した異空間を提示して見せた。
学生時代に演劇サークルの友人から唐十郎の強烈なインパクトのある芝居は聞かされていたが、アングロ風でどこ猥雑なイメージにはついていけないという印象が強かった。今回のこの番組であらためて唐十郎の目指したものが理解できた気がした。
とりわけ故・中村勘三郎が唐十郎と出会い、その芝居に衝撃を受けたことから「平成中村座」を旗揚げすることになったというくだりは興味深いものだった。勘三郎は「これこそ歌舞伎の原点だ」と受け止めたのだ。今や歌舞伎は伝統芸能として格式と様式美を極めている。それだけに観客との距離は大きい。歌舞伎の原点といわれる出雲の阿国の時代の芝居は、まさしく河原で観客と一体となって演じられていた。勘三郎が「平成中村座」で観客に提示して見せたものはその原点の再現だった。
勘三郎と唐十郎の出会いこそがそれをもたらした。
60~70年代に日本の演劇界を揺さぶった唐十郎率いる状況劇場がテーマである。劇場に頼らず、神社の境内や河原にテントを張り、全国各地で芝居を上演して回った。観客に日常に突如出現した異空間を提示して見せた。
学生時代に演劇サークルの友人から唐十郎の強烈なインパクトのある芝居は聞かされていたが、アングロ風でどこ猥雑なイメージにはついていけないという印象が強かった。今回のこの番組であらためて唐十郎の目指したものが理解できた気がした。
とりわけ故・中村勘三郎が唐十郎と出会い、その芝居に衝撃を受けたことから「平成中村座」を旗揚げすることになったというくだりは興味深いものだった。勘三郎は「これこそ歌舞伎の原点だ」と受け止めたのだ。今や歌舞伎は伝統芸能として格式と様式美を極めている。それだけに観客との距離は大きい。歌舞伎の原点といわれる出雲の阿国の時代の芝居は、まさしく河原で観客と一体となって演じられていた。勘三郎が「平成中村座」で観客に提示して見せたものはその原点の再現だった。
勘三郎と唐十郎の出会いこそがそれをもたらした。
アナザーストーリーズ 『ノルウェイの森』 ― 2022年02月25日
NHK・アナザーストーリーズ 『ノルウェイの森』の再放送を観た。4歳下の作者・村上春樹は同世代といってよい。番組では村上春樹の大ベストセラーの誕生の秘密と魅力を、村上を担当した編集者、同時代を生きた友人たち、そして『ノルウェイの森』を映像化したベトナム出身の映画監督の証言を織り交ぜながら描いている。
村上作品は確か何冊か読んだはずだが、特に印象に残っていない。それでも番組を通じて浮かび上がるこの作品の雰囲気や時代感覚には大いに共感するものがあった。WIKをチェックしで彼の人物像をあらためて知った。父親は京都伏見区の住職の息子であること、彼は西宮市内で育ったこと、中学時代に中央公論社の全集『世界の歴史』を愛読していたこと、早稲田大学の映画演劇科に進み、ジャズ喫茶に入り浸っていたことなど私自身の足跡に重なる部分が多いことに驚いた。
ちょうど断捨離の一環で蔵書の処分に着手していた。そこで偶然にも村上作品を見つけた。「ノルウェイの森」と「海辺のカフカ」である。これはもう再読するしかないと思った。再読は時代小説か歴史小説と思い込んでいたが、現在は「ノルウェイの森」に嵌っている。
村上作品は確か何冊か読んだはずだが、特に印象に残っていない。それでも番組を通じて浮かび上がるこの作品の雰囲気や時代感覚には大いに共感するものがあった。WIKをチェックしで彼の人物像をあらためて知った。父親は京都伏見区の住職の息子であること、彼は西宮市内で育ったこと、中学時代に中央公論社の全集『世界の歴史』を愛読していたこと、早稲田大学の映画演劇科に進み、ジャズ喫茶に入り浸っていたことなど私自身の足跡に重なる部分が多いことに驚いた。
ちょうど断捨離の一環で蔵書の処分に着手していた。そこで偶然にも村上作品を見つけた。「ノルウェイの森」と「海辺のカフカ」である。これはもう再読するしかないと思った。再読は時代小説か歴史小説と思い込んでいたが、現在は「ノルウェイの森」に嵌っている。
TBS"がっちりマンデー‼" ― 2022年01月16日
毎週日曜の午前7時半からのTBS『がっちりマンデー!!』を欠かさず観ている。サブタイトルにあるように、この番組で経済やお金にまつわる知識を日曜日に勉強して、月曜日から使えるようにしようという狙いがコンセプトのようだ。
個人的には経済やお金の問題よりも、時代の流れや経済環境の変化に伴う消費者ニーズのトレンドを巧みに救い上げたビジネス事例の紹介という点が興味深い。そうした事例を幾つも吸収することで、知らず知らずに地区社協等の地域活動での新たな取り組みのヒントを得ているように思う。
実際にこれまでにも地区社協主催の集客イベント型行事の「敬老のつどい」を、訪問よりそい型活動の「敬老お祝訪問」への転換を提案し実施した。また100人規模のお年寄り対象のお食事交流会「ふれあい交流会」をコロナ禍で断念を余儀なくされた時には、交流会会場のレストランとタイアップした「おでかけ食事券」を発行し、対象のお年寄り自身がお友だちを誘い合って出かけるという企画を提案した。こうした提案の背景には『がっちりマンデー!!』で吸収した時代のトレンドについてのヒントがあったと思っている。
個人的には経済やお金の問題よりも、時代の流れや経済環境の変化に伴う消費者ニーズのトレンドを巧みに救い上げたビジネス事例の紹介という点が興味深い。そうした事例を幾つも吸収することで、知らず知らずに地区社協等の地域活動での新たな取り組みのヒントを得ているように思う。
実際にこれまでにも地区社協主催の集客イベント型行事の「敬老のつどい」を、訪問よりそい型活動の「敬老お祝訪問」への転換を提案し実施した。また100人規模のお年寄り対象のお食事交流会「ふれあい交流会」をコロナ禍で断念を余儀なくされた時には、交流会会場のレストランとタイアップした「おでかけ食事券」を発行し、対象のお年寄り自身がお友だちを誘い合って出かけるという企画を提案した。こうした提案の背景には『がっちりマンデー!!』で吸収した時代のトレンドについてのヒントがあったと思っている。
劇場版”鬼滅の刃・無限列車編” ― 2021年09月26日
テレビ初公開という劇場版”鬼滅の刃・無限列車編”を観た。孫娘・花ちゃんが大好きなアニメである。世間でも大人から子供までその評判が社会現象化するほどのアニメである。一度は観ておかねばと思い、劇場版の放映を機会に2時間半の長編を観た。
結論から言えば、どこがそんなに良いのか分からないというのが率直な感想だった。何よりもテーマが何か理解できない。映像内容も半分以上をバトルシーンが占め、その表現も残酷でグロテスクに勝ちすぎるとしか思えなかった。宮崎駿作品のファンタジックで自然との共生等のテーマ性に富んだ作品に馴染んだ身には、”鬼滅の刃”は余りにもスタンスと距離感に違和感があった。
観終えて圧倒的な世評の高さに比べ、こんな感想しか語れない自分自身の感受性に多少の戸惑いがないではない。後期高齢者という年齢的な要因もあるのかもしれない。
結論から言えば、どこがそんなに良いのか分からないというのが率直な感想だった。何よりもテーマが何か理解できない。映像内容も半分以上をバトルシーンが占め、その表現も残酷でグロテスクに勝ちすぎるとしか思えなかった。宮崎駿作品のファンタジックで自然との共生等のテーマ性に富んだ作品に馴染んだ身には、”鬼滅の刃”は余りにもスタンスと距離感に違和感があった。
観終えて圧倒的な世評の高さに比べ、こんな感想しか語れない自分自身の感受性に多少の戸惑いがないではない。後期高齢者という年齢的な要因もあるのかもしれない。
“愚か者”大迫傑のラスト・チャレンジ ― 2021年08月09日
東京五輪の最後の楽しみは男子マラソンだった。とりわけ今回は大迫傑(すぐる)という傑出したマラソンランナーが出場する。3年前に2時間5分台の日本人には夢のような日本新記録をたたき出し1億円の報奨金を手にしたランナーである。
1カ月ほど前に、その大迫傑の密着取材番組であるNHKの”プロフェッショナル仕事の流儀「“愚か者”が、道を作る〜マラソンランナー・大迫傑〜”を観た。6年前にプロランナーに転向、アメリカに移住後、日本記録を2度更新する安定した実力、非常にストイックで独自の考え・哲学を持っている、時代を切り開こうとする強い意志。そんな大迫の高い壁に愚直に挑み続けて常識を覆してきた“愚か者”の知られざる闘いの記録を45分間に渡って共感しながら観た。
五輪前にまだ30歳の大迫は、今回の五輪マラソンをラストレースと位置づけレース後の引退を宣言した。現役生活の最後のレースは、新たな挑戦のスタートのレースでもあった。日本のマラソン界が世界と互角に戦える土俵づくりに向けた挑戦である。
真夏の過酷なレースは、大きな先頭集団からランナーたちが続々と脱落し10人に絞られた。30キロ過ぎにキプチョゲが仕掛ける。大迫は8番手まで下がった。もはやこれまでかと思って観ていたが、ここで大迫は粘り腰をみせる。36キロ付近で2人を追い抜き、6番手に上がる。いける!その前の4人の2位集団の背中が見えている。この勢いなら2位集団を追い抜くことも可能ではないか。瞬間的にそんな期待を抱かせる走りだった。ところが2位集団との16秒前後の差がどうしても埋まらない。最終的に6位入賞という最低ラインをクリアしてゴールした。
レース後の大迫のコメントがある。「レースを見ていた選手は『次は自分だ』と思っただろうし、絶対にメダルに絡める。後輩たちが必ずやってくれる」。大迫が最後のレースで残したものは、日本人の五輪マラソンでのメダルへの現実的な可能性だった。大迫は6位からの「あと一歩」を次の世代に託し、競技人生を終えた。
1カ月ほど前に、その大迫傑の密着取材番組であるNHKの”プロフェッショナル仕事の流儀「“愚か者”が、道を作る〜マラソンランナー・大迫傑〜”を観た。6年前にプロランナーに転向、アメリカに移住後、日本記録を2度更新する安定した実力、非常にストイックで独自の考え・哲学を持っている、時代を切り開こうとする強い意志。そんな大迫の高い壁に愚直に挑み続けて常識を覆してきた“愚か者”の知られざる闘いの記録を45分間に渡って共感しながら観た。
五輪前にまだ30歳の大迫は、今回の五輪マラソンをラストレースと位置づけレース後の引退を宣言した。現役生活の最後のレースは、新たな挑戦のスタートのレースでもあった。日本のマラソン界が世界と互角に戦える土俵づくりに向けた挑戦である。
真夏の過酷なレースは、大きな先頭集団からランナーたちが続々と脱落し10人に絞られた。30キロ過ぎにキプチョゲが仕掛ける。大迫は8番手まで下がった。もはやこれまでかと思って観ていたが、ここで大迫は粘り腰をみせる。36キロ付近で2人を追い抜き、6番手に上がる。いける!その前の4人の2位集団の背中が見えている。この勢いなら2位集団を追い抜くことも可能ではないか。瞬間的にそんな期待を抱かせる走りだった。ところが2位集団との16秒前後の差がどうしても埋まらない。最終的に6位入賞という最低ラインをクリアしてゴールした。
レース後の大迫のコメントがある。「レースを見ていた選手は『次は自分だ』と思っただろうし、絶対にメダルに絡める。後輩たちが必ずやってくれる」。大迫が最後のレースで残したものは、日本人の五輪マラソンでのメダルへの現実的な可能性だった。大迫は6位からの「あと一歩」を次の世代に託し、競技人生を終えた。
NHKスペシャル「巨大地下空間 龍の巣に挑む」 ― 2021年07月27日

NHKスペシャルの再放送番組「巨大地下空間 龍の巣に挑む」を観た。中国貴州省の「龍の巣」と畏れられてきた巨大洞窟群の初めての本格的な撮影を行った取材報告である。その驚異的なスケールと困難を極める撮影過程に圧倒された90分だった。想像を絶する異次元の世界に魅了された。
「龍の巣」自体を初めて知った。場所は香港の北西約600kmの中国貴州省南部の山奥にある。全長870m、高さ185m、容積1000万立方メートル、東京ドーム8つ分がすっぽり入るという世界最大、世界最長の巨大空間である。この巨大な洞窟群は光も音も呑みつくすブラックホールの暗黒の世界である。かつて誰もその全貌を把握できなかった。今回の撮影に当たって2年にわたる交渉の末、中国政府から撮影の許可を得てようやく調査が可能となった。内部をくまなく調査し謎に包まれた「龍の巣(ミャオティン)」の全貌と誕生の秘密が解き明かされる。
番組は大きく二つに分かれた編集になっている。前半は洞窟探検家、研究者、洞窟写真家等のプロジェクトチームによる第1回目の調査の映像記録である。漆黒の闇を手探りで踏破していく危険に満ちた調査の末に辛うじて洞窟群の全体を見極める。
後半は1回目の調査をもとに中国の照明技術の専門チームが大掛かりな照明機材を持ち込んで洞窟内の全貌を鮮明な映像で紹介する。その巨大さと大自然の創り出す驚愕の造形物に圧倒される。
初めて観る巨大地下空間”龍の巣”の驚愕の世界を満喫した。
「龍の巣」自体を初めて知った。場所は香港の北西約600kmの中国貴州省南部の山奥にある。全長870m、高さ185m、容積1000万立方メートル、東京ドーム8つ分がすっぽり入るという世界最大、世界最長の巨大空間である。この巨大な洞窟群は光も音も呑みつくすブラックホールの暗黒の世界である。かつて誰もその全貌を把握できなかった。今回の撮影に当たって2年にわたる交渉の末、中国政府から撮影の許可を得てようやく調査が可能となった。内部をくまなく調査し謎に包まれた「龍の巣(ミャオティン)」の全貌と誕生の秘密が解き明かされる。
番組は大きく二つに分かれた編集になっている。前半は洞窟探検家、研究者、洞窟写真家等のプロジェクトチームによる第1回目の調査の映像記録である。漆黒の闇を手探りで踏破していく危険に満ちた調査の末に辛うじて洞窟群の全体を見極める。
後半は1回目の調査をもとに中国の照明技術の専門チームが大掛かりな照明機材を持ち込んで洞窟内の全貌を鮮明な映像で紹介する。その巨大さと大自然の創り出す驚愕の造形物に圧倒される。
初めて観る巨大地下空間”龍の巣”の驚愕の世界を満喫した。
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