NHKスペシャル「台頭する“第3極”インドの衝撃を追う」2023年07月17日

 「NHKスペシャル 混迷の世紀 第10回 台頭する“第3極” インドの衝撃を追う」を観た。ネット上に以下の番組紹介記事があった。
 「今月、人口が世界一となったとされるインド。政府が整備したデジタル・プラットフォームを推進力に急成長、ユニコーン企業が次々と誕生している。その技術は今、アフリカなどグローバル・サウスの国々に広がり始め、インドの存在感を高めることにつながっている。そしてモディ首相は、ロシアとの結びつきを保ちながらアメリカとも協力を深め、したたかに実利を得ている。独自の技術と外交で台頭する、インドの“衝撃”を伝える。」
 インドが中国を抜いて世界一の人口となるという報道に接した時、少なからず衝撃を覚えた。あの巨大国土を擁する人口大国・中国を超える国があることが信じられなかったからだ。反面で習近平体制の強権支配の中国に対峙するインドの影響力拡大に拍手する気分もないではなかった。
 今やインドは単に人口世界一だけの大国ではない。GDP世界ランキング5位の経済大国であり、2027年には日本を抜いて世界3位となると予測されている。
 番組では、インドの経済成長を加速させている政府主導のデジタル・プラットフォームに焦点を当てる。国民の生体情報を個人情報と合わせて個人IDとして登録。それをベースにデジタル決済システムを構築し、民間企業が自由に利用できるようにしている。この技術によって、これまで銀行口座を持てない人が多かった農村地域の8億人以上が市場経済に組み込まれることになったという。
 かつて人口の多さは貧困の高さに比例していた。ところが生体認証というリスクの大きなデジタル技術が新たな経済市場を生みだしたことに驚愕した。
 インドを率いるのは在任10年近い72歳のモディ首相である。ロシアのウクライナ侵攻を皮切りに米欧と中ロの分断と亀裂が顕著である。この二つの流れに距離を置くグローバル・サウスが第3極としての影響力を高めつつある。モディ首相はグロバル・サウスの盟主としての存在感を増してきた。

NHKクローズアップ現代”学童落ちた!仕事どうする?”2023年06月24日

 先日、娘家族が帰省した際に小2の孫娘の子育てについて雑談した。典型的な共働き世帯で、大津市在住の娘は1時間程かけて通勤している。コロナ禍で在宅勤務にシフトしていたが再び通勤のウエイトが増えてきている。”学童保育”で凌いでいるが、子育てと仕事の両立は依然として悩ましい問題のようだ。
 そんな時、NHKのクローズアップ現代で”学童落ちた!仕事どうする? 追跡“学童保育クライシス”という刺激的なタイトルの番組が放映されていた。番組を観終えた後、ネットでNHK学童保育取材班の「学童保育から見える“今の子どもたち”のリアル」と題する番組解説記事を見つけた。 https://www.nhk.or.jp/minplus/0028/topic043.html
 地元小学校の”学童”に多少かかわった経験もあり、”学童”が抱える課題や問題点がよく整理されていことが分かった。
 「今の子どもたちの公園等の外で遊ぶ時間の減少」「外遊びが減ったことで時間、空間、仲間の3つの間が失われている」「保育園の待機児童数が減り続けているのとは対照的に、学童保育の待機児童数ほぼ横ばい」「狭い部屋でぎゅうぎゅうになって過ごす学童の現実」等々。
 ”学童”に関わりのなかったオジサン世代にはぜひお勧めのサイトである。

BS世界のドキュメンタリー「バルト海の憂鬱 ウクライナ侵攻の波紋」2023年05月18日

 NHK・BS世界のドキュメンタリー「バルト海の憂鬱 ウクライナ侵攻の波紋」を観た。ネット上には下記の番組紹介記事があった。
 「ヨーロッパで古くからの地政学的要所であるバルト海。沿岸にはロシアの飛び地カリーニングラードもある。ウクライナ侵攻以来の緊張の高まりと周辺諸国の対応を読み解く。冷戦後、バルト海の往来が活性化しても、周辺諸国のロシアへの不信感は続いていた。2014年のクリミア併合を受けて各国は軍備を強化。そしてウクライナ侵攻が始まると、旧ソ連諸国は「明日は我が身」と身構え、中立を保ってきたフィンランドとスウェーデンは一転してNATOへの加盟を希望した。沿岸諸国の危ういバランスを解説。」
 48年前に労組役員のひとりとして今はロシアとなったソ連邦を訪問する機会を得た。訪問先のひとつがバルト海沿岸のラトビア共和国の首都リガだった。
 この番組はそんなバルト海の沿岸諸国のロシアのウクライナ侵攻に揺れ動く今を克明に伝えていた。番組ではバルト海とその沿岸諸国の地勢学的な意味をマップをつけて紹介している。あらためてマップに示されたラトビア共和国の危うさを理解した。
 番組ではバルト海周域の10カ国とヨーロッパ委員会で構成される「バルト海沿岸諸国評議会」についても紹介されている。初めて知った国際組織である。従来ロシアも加盟していたが、ウクライナ侵攻直後の5月に脱退した。現在の加盟国はデンマーク、エストニア、フィンランド、ドイツ、アイスランド、ラトビア、リトアニア、ノルウェー、ポーランド、ロシア、スウェーデンである。
 地図で見ると、バルト海沿岸をほぼ網羅しているが、唯一リトアニアとポーランドに挟まれたロシアの飛び地・カリーニングラードだけが非加盟である。ロシア海軍のバルチック艦隊司令部が置かれ、ロシアでも有数の工業都市である。
 バルト海沿岸諸国の緊張感あふれる現在の新たな知識を教えられた番組だった。

BS-TBS「藤圭子熱唱 名曲秘話と波瀾の人生」2023年03月05日

 TV番組表で気になる番組が目についた。BS-TBSの「藤圭子熱唱 名曲秘話と波瀾の人生」という番組である。録画してじっくり観た。
 藤圭子は私だけでなく同世代の特にオヤジたちには印象的で魅力的な歌手ではなかっただろうか。ドスの効いたハスキーボイスと圧倒的な歌唱力は、その可憐な風貌とのギャップとも相まってきゅおうれつなインパクトをもたらした。
 ♪15、16、17と 私の人生暗かった 過去はどんなに暗くとも 夢は夜開く♪ 
この「圭子の夢は夜ひらく」の歌詞のイメージは、彼女の人生そのものだった。浪曲師だった父母に連れられて少女時代を”どさ回り”で過ごした。中学卒業後は貧しい生活を支えるため進学をあきらめ、歌謡大会に出場。その姿がある作曲家の目に留まり、上京。幾つかのオーディションを受けるが惨敗し、錦糸町や浅草などで母と流しをする。それでもファーストアルバム「新宿の女」を皮切りにヒット曲を連発し、押しも押されぬ演歌歌手として大成する。華やかな歌手生活とは裏腹に私生活は恵まれない。前川清との結婚生活は1年で破綻し、宇多田照實と再婚し宇多田ヒカルをもうける。宇多田ヒカルの歌手デビューと入れ替わるように歌手生活から引退する。晩年には精神疾患を病み62歳で自殺する。光と影を宿した波乱万丈の人生である。 
そんな藤圭子のヒット曲の紹介と波瀾の人生を綴った2時間番組を堪能した。

BS-TBS「通信簿の少女を探して」2023年02月22日

 BS-TBSで放送された「通信簿の少女を探して~小さな引き揚げ者 戦後77年あなたは今~」を観た。共感を呼ぶ見応えのあるドキュメント番組だった。
 番組ディレクターが偶然手にした画家・ゴーギャンの古書に1枚の色褪せた通信簿が挟まっていた。昭和23年卒業の⼤分県別府市の
小学6年生の少女のものだった。体育の「良」を除いて全科目「優」の優秀な成績だが、担任教師のコメントには「人望に欠ける」と指摘されている。この印象的な通信簿を本人に届けたいという想いが、少女を探す旅路の始まりとなった。
 手掛かりが殆どない少女を探す苦難の旅路が続く。それでも少しずつ足掛かりを得て前進する。その過程をサスペンスドラマにも似たハラハラ感で視聴する。当時、別府に多かった満州からの引き揚げ者ではないかという糸口が旅路を大きく前進させる。
 これまで、大陸からの”引き揚げ者”という戦中・戦後の欠かせないファクターについて真正面に受止めて考えることはなかった。今回のこの番組ではからずもそのテーマに初めて本格的に向き合ったきがする。この番組の主たるテーマはその点にあったと受け止めた。
 小学校の卒業写真が発見され大柄な少女の姿が映される。番組の最後の関心は否応なく成績優秀で孤立感のある大柄な”通信簿の少女”が見つかるかということに絞られる。そして最後にその少女の80年近い歳月を経た老後の姿が登場する。インタビューに答える彼女のイメージは老いを感じさせない気丈で明快な意思を伝えられる女性だった。その期待以上に存在感のある毅然とした、そして在りし日の美しさを漂わせた姿に思わず拍手した。
 爽やかさをもたらした見応えのある番組だった。

NHKドラマ「ガラパゴス」2023年02月14日

 NHK・BSのドラマ「ガラパゴス」を観た。2月6日と13日の前後編3時間の大型番組だった。日本の派遣労働の実態と非正規雇用問題を真正面に捉えたサスペンスタッチの見応えの社会はドラマだった。
 団地の一室でひとりの青年の遺体が発見される。身元不明の自殺として処理されたその死は、自動車メーカーの巨悪を隠ぺいするために仕組まれた殺害だった。織田裕二演じる捜査一課継続捜査班刑事の卓越した捜査手法で真実が次々と明らかになる。業界最大手の人材派遣会社と自動車メーカーが手を組んで仕組まれた巨悪が、ひとりの誠実に生きて殺害された沖縄出身の青年の想いによって暴かれる。
 それにしても久々に圧倒された骨太のドラマだった。NHKにしてはよくぞ制作したものだ。BS放送だから辛うじて放映できたのだろうか。日本の派遣労働と非正規雇用の実態をリアリティ溢れる映像で描いている。

NHK「灼熱地球の恐怖 〜ウクライナ侵攻 もう一つの危機〜」2023年02月06日

  NHKスペシャル混迷の世紀第7回・灼熱地球の恐怖 〜ウクライナ侵攻 もう一つの危機〜」を観た。NHKのネット記事にはこの番組が以下のように紹介されている。
 「国際社会が協調して進めてきた脱炭素の動きがロシアによる軍事侵攻後、大きく揺らいでいる。石炭の採掘が拡大する一方、原子力活用の議論が各地で進むが、リスクへの懸念も高まっている。そして温暖化対策をめぐる先進国と途上国との溝もさらに深まっている。国際社会は分断を乗り越え、地球規模の課題にどう向き合っていくのか。最前線の取材と識者の分析・提言を交えて、脱炭素の行方を探る。」

 衝撃的で考えさせられる番組だった。ロシアのウクライナへの軍事侵攻は、それ自体が一方的で許しがたい蛮行という他ないが、それ以上にそれが人類と地球に深刻な爪痕を残そうとしている。その現実をまざまざと突き付けられた。
 天然ガスの大供給国だったロシアの軍事侵攻のよる欧米の経済制裁でエネルギー不足に陥ったヨーロッパ等で石炭の再活用に舵を切り、温暖化対策は大きく後退した。他方で慎重だった原子力発電の活用が見直され稼働が再開されつつある。先進国の温暖化被害の大きい途上国への支援に比べウクライナ支援の大きさに途上国の苛立ちが募っている。結果的にロシアの軍事侵攻は先進国と途上国の分断に拍車をかけている。
 何ともやりきれない事態である。ひとりの大国の指導者の独善的で愚かな決断が地球と人類にかくも過酷な被害をもたらしている。人類の叡智の脆弱さに暗澹たる想いを抱かせられた。

NHK「ビジョンハッカー~世界をアップデートする若者たち~」2023年01月11日

 1月9日にNHK・BSで再放送された「ビジョンハッカー~世界をアップデートする若者たち~」を観た。NHKのHPには次のような番組紹介があった。『ビジョンハッカーとは「目の前の課題解決に取り組む」だけにとどまらず、課題を生み出すシステムや背景にも注目し、これまでにないやり方で挑む人々。東日本大震災以来、そうした若者が増えたことに注目した日本のNPОが命名。趣旨に賛同するゲイツ財団と連携してビジョンハッカーの発掘に取り組んでいる。「利益追求より社会貢献」というデジタルネイティブから生まれた、世界各地のビジョンハッカーたちに密着する』
 また同じHPにはこの番組の優れた「まとめ記事」がシィ御迂回されている。
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/blog/bl/pneAjJR3gn/bp/plNDexejLd/

 興味深くて感動的な番組だった。日本だけでなく世界で、困難な課題に背景にまで踏み込み、構造やシステムの構築を通して問題解決に挑んでいる若者たちの奮闘を伝えている。
 「まとめ記事」には次のような印象的な記述がある。「新型コロナによって、グローバル資本主義が行きついた先で様々な矛盾が噴きだしている今。かつてのゲイツ氏のように、社会システムを根本から変えようという若い世代が、世界各地で活躍しています。その名も“ビジョンハッカー”。スマートホンを武器にしながら、仲間や資金を集め、軽やかに行動しています。これまでの世代が解決できないままの問題に立ち向かう若者たち。世界各地のビジョンハッカーを追いました。」
 取組む課題は様々で困難なものばかりだ。子どもの貧困問題、エッセンシャルワーカーの連帯と待遇改善、スラム街の住民たちの貧困解決のシステム、コロナ感染の危険にさらされながら最前線で働く医療従事者の支援の仕組みづくり、バングラデシュを舞台に途上国のコロナ感染対策の取組み、テロリストの社会復帰を実現する事業の立上げ等々。
 
 共感したのは次の2点である。ひとつは目先の課題解決でなくその背景にある社会システムの変革に迫る姿勢である。今ひとつはそうした取組みを20代~30代の若者たちがスマホ等を武器にして果敢に挑戦している点である。

NHK:欲望の資本主義「メタバースの衝撃・・・」2022年08月23日

NHKの「欲望の資本主義2022夏特別編:メタバースの衝撃 デジタル経済のパラドックス」を観た。近未来を俯瞰する衝撃的で示唆に富んだドキュメンタリー番組だった。
 メディアでは「メタバース」という言葉が今やホットなテーマとして踊っているという。個人的には初めて知った言葉だったが・・・。端的に言えば「ネット上の三次元グラフィックの仮想空間(社会)」ということのようだ。
 番組ではどんどん変貌し進化するデジタルネットワーク社会を象徴するキーワードが飛びかう。アバター(バーチャル空間で自分の分身として表示される)、Web3(次世代分散型インターネット)、ブロックチェーン(暗号通貨ビットコインの公開取引台帳)、NFT(ブロックチェーン上で管理ができるトークン〈データを最小の構成単位に分解したもの〉の1つ)等々。
 ネット社会の進行に伴いビッグテック5社(アップル、アマゾン、グーグル、フェイスブック、マイクロソフト)の弊害が顕在化し解体が叫ばれている。そのこと自体には共感していたが、具体的な手立てが見えず懸念していたテーマだった。どうやらメタバースの持つ分散型インターネットの概念はビッグテックの集中型ネットの上を行くモデルのようだ。メタバースは多様な人材が多様な価値観を実現するためのプラットフォーム機能という意味合いもあるようだ。
 あらためて学習しておきたいテーマと受け止めた。

NHK特集ドラマ「定年オヤジ改造計画」2022年07月30日

 郷ひろみが久々に主演するNHK特集ドラマ「定年オヤジ改造計画」を観た。リタイヤオヤジのセカンドライフは個人的にも関心の深いテーマであり、自費出版した自叙伝でもテーマのひとつとして綴っている。ドラマは私のセカンドライフとオーバーラップするように展開し、興味深く共感しながら2時間を過した。
 観終えてまず思ったのはかつてのアイドルである大スターが、久々に主演を演じた役回りが”定年オヤジ”だったという落差である。実年齢66歳なのだから定年オヤジも役不足でない。ただ郷ひろみの多くの女性ファンには違和感を覚えながら観たことだろう。演技についてもどこか地に足がついていない感じが否めないのも大スターと定年オヤジの落差の故なのだろうか。
 亭主の定年がしばしば引き起こす”夫源病”が登場する。思わず一緒に観ていた家内に聞こえるように呟いた。「反対の”妻源病”もあるのに・・・」。定年オヤジの夫婦間の葛藤を描いたドラマである。そんなドラマを夫婦二人で仲良く観ている我が家の安泰ぶりに安堵した。