コミュニティ交通の在り方は?2021年05月20日

 山口町でのコミュニティ交通に関わる議論が始まっている。超高齢社会を迎えて、マイカーによる移動を断念したり、坂道の多い地域の移動が困難だったりする中で、最寄り駅への移動、買物、通院等の地域支援が課題になってきたということだろう。
 コミュニティ交通の在り方というテーマの趣旨はあくまで「交通弱者への移動支援」である。路線バスの利便性、社協等が実施するカーボランティア、病院や大型店舗等の事業者が提供する送迎バス、介護タクシー、コミュニティバスの運行、マイカーのオートドライブ化等、移動支援には多様な選択肢がある。それらの活用、組み合わせ、新規導入等の多面的な検討が必要だが、どうも議論は「コミュニティバス導入」という点に絞られすぎているように思える。近隣地域でコミュニティバスの試験運行が相次いでいることもそうした流れを加速させているようだ。
 ただコミュニテイバス運行には多額の初期投資や運営コストの負担が想定され、その負担問題の調整というハードルが待ち受ける。また山口町内に鉄道最寄り駅がないこともあり、コンセンサスの得やすい運行ルートの設定は難しく、地域の利害がもろに噴出する懸念もある。従って試験運行迄には数年を超える長期の時間を要すると思われる。他方で車のオートドライブ(自動運転)化は想像以上に進捗が加速化している。進捗に合わせて高齢者等の運転可能年齢も伸びることだろう。コミバス運行に要する期間を上回るペースでの進捗も想定され、コミバス運行実現の頃にはオートドライブ活用が始まっているという環境を迎えているかもしれない。
 更にコロナ禍がコミュニティバス運行に大きな影響を及ばしかねない事態をもたらしている。コロナ禍が行政に感染対策や住民支援で莫大な支出を余儀なくさせている。北部地区の各地域で想定されるコミバス運行に一定の予算措置が講じられていたという情報もあるが、それもコロナ禍対応の緊急財政で保証の限りでない。加えてコロナ感染という観点からは、マイクロバス等の小型車両の密閉されたスペースでの移動は、基礎疾患の多い高齢者中心の乗客の移動手段としての妥当性が問われかねない。
 コミュニテイバスを頭から否定するつもりはない。要はコミュニティ交通とはあくまで交通弱者支援がテーマであり、そのための多様な選択肢のそれぞれの功罪を客観的に冷静に検討すべきではないかということである。始めにコミバスありきの議論では結果的に将来大きな悔いを残しかねない懸念がある。