電動自転車で駆け抜けた美瑛パノラマロード2007年09月12日

 早朝の電車に乗車するため7時からの朝食を早めてもらい早々にチェックアウトした。富良野の駅前は工事中ながら穏やかで牧歌的な佇まいを残していた。富良野線の7:24発旭川行の電車に乗車した。JR北海道の普通電車は殆どが一両車両のワンマンカーのようだ。美瑛駅までの36分の車窓の風景は、シーズン中はラベンダーの咲き誇る田園風景をノロッコ電車が走っている。夏休みを終えた今はノロッコ号は土日に限られ、季節を過ぎてラベンダーも望むべくもない。晴天なら遠望できる筈の噴煙上る十勝岳すらも雲に覆われた曇天には姿はない。
 8:00美瑛駅に到着。周辺で採掘される大理石で造られた駅舎自体が、多くのプロモーションビデオにも採用される観光スポットである。駅舎を中心に広い駅前広場を挟んだ街並みは素晴らしい景観だった。
 美瑛駅前で散策したり、コンビニ風の店で昼食用のサンドイッチを購入したりして20分ばかりを過ごした。8:21発の富良野行で次の美馬牛駅でまで引き返す。ワンマン電車の運転手に切符を渡して無人駅を下車する。駅裏にあるレンタサイクル店「ガイドの山小屋」で予約しておいた電動自転車を借りる。初めての電動自転車だったが、自転車の変速機操作と同じ要領で電動モーターのON、OFF、UP(パワーアップ)を切替えるだけの思いのほか簡単な操作だった。3時間程度のサイクル観光ということで「パノラマロード」のコースを勧められマップをもらう。
 今回の旅の楽しみのひとつである「美瑛の丘のサイクルめぐり」が9:00にスタートした。駅の東の緩やかな登り路を一路南に向かう。通常の自転車なら途中で息が上がりそうな上り坂も楽々と運んでくれる。ほどなく右手に色鮮やかな花畑が見えてくる。「四季彩の丘」である。飲食や土産物の売場を収めた建物の中を抜けると季節外れでも観光用にメンテされたラベンダーの紫等の色とりどりの帯状の花畑が圧倒的な迫力で目の前に広がっている。
 四季彩の丘から拓真館に向かうコースはなだらかな下り坂だった。モーターをOFFにしてペダルを固定したまま快適なサイクリングが思い切り楽しめる。顔に降り注がれる初秋の爽やかな風が心地良い。左右の広大な丘陵の絶景を眺めながら軽快に滑るよう走る自転車にひたすら身を任せた。
 拓真館は白樺林に囲まれたチャペルのような趣きの建物だった。写真家・前田真三氏のギャラリーである。館内に入り美瑛に魅せられたプロカメラマンの絵画のような美しい傑作の数々を見て回る。この施設は廃校となった小学校の跡地が利用されている。8千坪もの敷地にはラベンダー畑や白樺林の散策コースがあり、ここから展望できる丘陵の風景と相俟って必見のスポットである。
 拓真館から更に南下した所に「哲学の木」がある筈だが見つけられなかった。コースに沿ってUターンし北上する。「ふれあい牧場」の看板を見つけ右に折れる。砂利道を行くと広大な牧場が広がっていた。どこかの保育園の園児たちが柵越しにポニーたちと戯れている。乳牛や羊の柵もありちょっとした自然動物園である。牧場の奥のレストランに立ち寄り牧場のソフトクリームを味わう。
 レストラン前の道はそのまま次のスポット「千代田の丘見晴台」につながっていた。ところが見晴台の展望台に向う砂利道の登り勾配が思いの他きつかった。パワーアップした電動アシストをもってしても半ば過ぎの地点で動かなくなった。やむを得ず降りて自転車を押しての歩行となる。私をしてもそんな状態だから家内はずっと下の地点から歩行している。展望台に駐輪後坂を下り家内の自転車を引き取る。サイクル観光に難色を示していたのを敢えて押し切ったのだからこの程度のサポートはやむをえまい。高台の展望台には鉛筆を載せたような展望塔があ、ここからはまさしく360度の美瑛のパノラマが見渡せる。展望台傍の5本の白樺の木が印象的だ。
 展望台からは北の美瑛駅方向に向ってなだらかな下り坂が延々と続く最高のパノラマコースである。途中の「三愛の丘」展望台で小休止し更に北に進む。MAPによればJR富良野線を跨いだ跨線橋(アンダーパス)に出る筈だ。かなり走行したのにそれらしき景色はどこにもない。どこかで道を間違えたようだ。誰かに道を尋ねようにも辺りに人影はどこにもない。あちこちさまよう内に時間はどんどん経過する。美馬牛駅発の電車の時間が迫ってくる。道路から見上げる丘陵で工事中の人たちを見つけた。大声で尋ねてとりあえずの方角を定める。駅近くの美馬牛小学校のとんがり屋根をようやく見つけた。丘の上の小学校を目指して最後の登り勾配に挑戦する。電車の発車20分前になんとかレンタサイクルを返却できた。
 12:16発の電車で富良野駅に到着。新千歳空港行の電車の発車は20分後である。駅から200mほど先の「『北の国から』資料館」の概観と入口だけを確認して引き返した。13:06富良野駅発の電車で滝川駅まで行き、特急スーパーホワイトアロー20号札幌行に乗り換える。札幌からは同じ電車が新千歳空港行のエアポート152号に変身する。札幌から乗り込んできたサラリーマン風のおじさんが手に号外を持っている。「阿部首相が辞意」の大きなタイトル文字が踊っている。思わず「エーッ阿部首相が辞めたんや」と声を出したところ、次の駅で下車するおじさんは降り際に北海道新聞の号外を渡してくれた。
 JR新千歳空港駅を降りエスカレーターを上った所はもう空港ビルのショッピングゾーンである。お土産を買い込んだ後、自宅で夕食を待っている筈の娘の分も含めて空弁を調達した。帰りの便は自宅に近い伊丹空港着である。21:30には自宅で家族3人の遅い空弁夕食を味わっていた。