死闘2008年08月21日

 それは「死闘」という言葉がピッタリの試合だった。昨晩の北京五輪女子ソフトボール3位決定戦の中継に釘付けになっていた。昨日の午前の準決勝戦でアメリカに延長の末敗れた日本が、5時間後にはオーストラリアと対戦している。ソフトボールというスポーツの過酷さをはじめて知った。その過酷さの中で日本のエース上野は朝の試合に続いての先発連投である。しかも上野はアメリカ戦では延長2回も含め9回をひとりで投げ抜いたばかりだ。
 オーストラリア戦は1点先行された後、2ランホームランで逆転して7回の最終回を迎えた。ツーアウトを取りあと一人の場面だ。勝利は目前である。それまでの上野の快投ぶりから誰もが勝利を信じていた。その時だ。次の打者の打球は中継アナウンサーの悲鳴にも似た声とともに外野フェンスの向うに吸い込まれた。
 タイブレーク方式の延長戦が始まる。ノーアウトでランナー2塁からスタートする攻防が4回目を迎えた。再三のチャンスに拙攻を繰り返す日本の攻撃に苛立ちが募る。11回表、恐れていた事態が起きた。オーストラリアがついに追加点をもぎ取った。万事休す。朝のアメリカ戦のタイブレーク後の悪夢が甦る。ところがその裏、日本は見事に追加点をあげ試合を振り出しに戻した。なんという粘りだろう。なんというドラマチックな展開だろう。
 そして迎えた12回裏である。1死満塁の場面で2番西山が登場した。先天性の心臓疾患を中学時代に心臓弁の移植手術を受けて乗り越えてきたアスリートだ。願ってもない最高のサヨナラ劇の舞台での登場だ。祈るような気持ちで見つめる中、西山の打球が見事に右中間にはじき返された。3塁ランナーがホームベースを手を合わせるようなしぐさで踏みしめた。ワカル、ワカル。死闘を制した見事なサヨナラ打だった。感動的で劇的な幕切れだった。そして歓喜の瞬間だった。スポーツが与えてくれる感動の醍醐味を遺憾なく味わった。

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