猪との知恵比べ2009年09月18日

 早朝の有馬川沿いの散歩道で見つけた。開いたばかりの彼岸花の花弁が朝露に濡れてみずみずしい色香を漂わせていた。これから開こうとする妹分たちが傍でつぼみを寄せ合っていた。
 隣町の平田の田園地帯に来た。山裾のたわわに実った稲田の周囲が何故かグリーンのネットで覆われている。すぐ傍の畦道で草刈りをしているオジサンがいた。朝の挨拶を交わしたついでに訊ねた。「この網は何のためのものですか?」。朴訥な口調が返ってきた。「猪避けなんです。親猪が田圃に入って寝転んで稲を倒すんです。そうして倒れた稲を子供に食べさせるんです」。
 丹波篠山の峰続きの街である。猪が出没したとしても不思議でない。その猪が稲を食べに山を下りてくる。親猪は背が届かないうり坊(子猪)たちに稲を食べさせるために寝転んでいる姿を想像した。その微笑ましい想像に思わず口元がほころんでしまう。とはいえお百姓さんたちにとっては闘いの場である。猪の侵入をブロックするために智恵を絞り汗をかく。自然を対象とした人の営みもまた、自然界での生存競争の輪の中にあると知った。