北方謙三著「破軍の星」 ― 2014年04月02日
北方謙三の著作「破軍の星」を読んだ。北方謙三の歴史小説はこれが5作目ですっかり嵌まってしまった。南北朝時代の実在の人物である公卿出身の武将・北畠顕家を主人公とした物語である。この作品の前に読んだ「武王の門」「陽炎の旗」は、後醍醐天皇の皇子・懐良(かねよし)親王を主人公とした物語とその後日譚であるが、この作品もまた同じ流れを汲む物語である。
顕家は、若干16歳にして陸奥守に任じられ、後醍醐天皇の皇子のひとりである6歳の義良親王を奉じて父・親房とともに任地の奥州・多賀国府に赴く。短期間に政治機構を整備し住民を掌握し軍備を整え、瞬く間に奥州統治に成功する。奥州統治の基盤を背景に二度に渡って東海道を進撃し、京都周辺で足利尊氏軍と闘う。一度目は尊氏を九州に敗走させるものの、二度目は大阪近郊の闘いで21歳の若さで討死する。陸奥守に任じられた16歳から討死までの5年間を閃光の如く駆け抜けた顕家の峻烈な姿を描いた物語である。
作者の持ち味であるハードボイルド風のスピード感あふれる物語性の巧みさに、一気に物語世界に引き込まれてしまう。物語性だけではない。考えさせられるテーマ性もある。奥州一円に広大で強大な勢力を張る山の民・安家一族が登場する。顕家と安家一族を束ねる利通との緊張に満ちたやりとりが展開される。奥州はどうあるべきかという話題である。藤原四代の末裔を暗示する安家一族の、陸奥に独立王国を作り上げたいという夢が投げかけられる。
「『国とはなにか、ということをまず考えなければなるまいな。(略)白河以北をひとつの国、というふうに考えたことはない』『国とはなにかを考えたなら、白川以北がひとつの国であっても、不思議はありますまい。京は、遠すぎます。(略)民草が、枯れてしまいますぞ』。顕家は眼を閉じた。民草ということで考えれば、白河以北はひとつの独立した国であったほうがいい。そして国とは、民草を基本に置いて考えるものではないのか。しかし、民草の血というものがある。その血は、関東も、京も、九州までも、同じ血ではないのか。そして国は、そういう同じ血の集まりではないのか」。
この作品の中で最も鮮烈な印象をもたらした一節だった。
顕家は、若干16歳にして陸奥守に任じられ、後醍醐天皇の皇子のひとりである6歳の義良親王を奉じて父・親房とともに任地の奥州・多賀国府に赴く。短期間に政治機構を整備し住民を掌握し軍備を整え、瞬く間に奥州統治に成功する。奥州統治の基盤を背景に二度に渡って東海道を進撃し、京都周辺で足利尊氏軍と闘う。一度目は尊氏を九州に敗走させるものの、二度目は大阪近郊の闘いで21歳の若さで討死する。陸奥守に任じられた16歳から討死までの5年間を閃光の如く駆け抜けた顕家の峻烈な姿を描いた物語である。
作者の持ち味であるハードボイルド風のスピード感あふれる物語性の巧みさに、一気に物語世界に引き込まれてしまう。物語性だけではない。考えさせられるテーマ性もある。奥州一円に広大で強大な勢力を張る山の民・安家一族が登場する。顕家と安家一族を束ねる利通との緊張に満ちたやりとりが展開される。奥州はどうあるべきかという話題である。藤原四代の末裔を暗示する安家一族の、陸奥に独立王国を作り上げたいという夢が投げかけられる。
「『国とはなにか、ということをまず考えなければなるまいな。(略)白河以北をひとつの国、というふうに考えたことはない』『国とはなにかを考えたなら、白川以北がひとつの国であっても、不思議はありますまい。京は、遠すぎます。(略)民草が、枯れてしまいますぞ』。顕家は眼を閉じた。民草ということで考えれば、白河以北はひとつの独立した国であったほうがいい。そして国とは、民草を基本に置いて考えるものではないのか。しかし、民草の血というものがある。その血は、関東も、京も、九州までも、同じ血ではないのか。そして国は、そういう同じ血の集まりではないのか」。
この作品の中で最も鮮烈な印象をもたらした一節だった。

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