死者が紡ぐ親族の縁(えにし)2008年11月19日

 朝6時、セレモニー会館での夜明けを迎えた。8時に会場用意の朝食を済ませたばかりなのに、10時には「立飯(たちはん)」という昼食に案内される。昼食会場には巻き寿司が並べられている。義兄から「慌ただしい葬儀の日の簡便な昼食として用意されるこの地方の風習」と聞かされる。
 12時に告別式が始まった。3人の僧侶の読経の中で参列者の焼香が始まる。通夜式には参列できなかった町内会の皆さんの列が続く。弔電の紹介がある。仕事でどうしても参列が叶わなかった息子の弔電も読み上げられる。読経が終わり、僧侶の退席後、喪主である義兄の挨拶が始まる。昨晩私も少し手伝った挨拶文のメモを手に、時に声を詰まらせながら訥々と語られる。いい挨拶だった。会葬者の退席の後、最後のお別れがやってきた。遺族、親族が棺の中で眠る義母に花を添えながら別れの対面をする。
 告別式が終わり、タクシーに分乗して火葬場に向う。直系遺族である家内は遺影を、娘は骨壷を胸にしている。火葬場で棺を前に簡単な読経があり、棺が炉の前に運ばれる。喪主が促されて炉の火に点火する。参会の誰もが息を呑む瞬間だ。待合室で待つ参会者に骨上げのアナウンスが入る。予定時間より早い連絡だった。90歳の天寿を全うした肉体が通常以上に早い旅立ちをもたらしたのだろうか。参会者ひとりひとりが遺骨を骨壷に納めていく。 
 再び式場に戻った参会者は、告別式場で初七日を兼ねた法要に参列する。終了後、別室で用意されたお膳を前に会食となる。始まって間もなく親族の一人が喪主に声をかけた。「折角こうして集まっても、初めての人もいる。参加者の自己紹介をしてはどうか」。いい提案だった。喪主を筆頭に故人との繋がりから始まる自己紹介が続いた。義母方の親族と義父方の親族が久々に集い会う場である。前回の集まり以来世代が入れ替わっている場合もある。故人との糸を手がかりに各自が発言者との関係を確認していく。死者が紡ぐ親族の縁(えにし)をあらためて教えられた。