中谷巌著「資本主義はなぜ自壊したのか」(その2) ― 2009年02月15日

本書は、著者・中谷巌氏自身が述べているように「懺悔の書」でもある。要約すれば以下のようになろうかと思う。
『1980年前後から始まった「サッチャリズム」、「レーガノミックス」は、「新自由主義思想」から生まれた。それは「小さな政府」「市場原理」「自己責任」を軸としてあらゆる経済活動をマーケット・メカニズムの調整に委ねることが、経済効率の向上とダイナミズムをもたらすというものである。個々人が自己責任に基いて競争する社会こそが健全であり、人々を幸福にし、経済を発展させるという考え方である。それは1991年のソ連崩壊によって、その正しさが証明されたという印象を大多数の人々に与えた。ソ連崩壊に伴い東側諸国にも資本主義原理が導入されるようになったことで、世界経済は急速に一体化していった。これを受けて中国やベトナム等の社会主義国でも経済の「改革・開放」が行なわれるようになった。かくして人類は「グローバル・マーケット」の時代に突入し、グローバル資本主義という人類そのものを滅ぼしかねないモンスターを産み出してしまったのではないか。
1980年代後半の日米通商摩擦では、新自由主義思想を背景にアメリカ政府は、閉鎖的な日本の市場を開放するための構造改革の早急な実施を要求した。この新自由主義思想が日本で市民権を得たのが「小泉構造改革」だった。「五五年体制」と呼ばれる既得権益構造をぶち壊し、日本経済のグローバル化を公約に掲げて登場した小泉政権は国民の驚異的な支持率を獲得した。
こうした大きな歴史の流れの中で著者は、この「構造改革」の急先鋒の一人だったと述懐する。著者が主要メンバーだった小渕内閣の「経済戦略会議」の提言のいくつかが小泉構造改革にそのまま盛り込まれたことで、間接的ながら「小泉構造改革の片棒を担いだ男」だったと吐露している。』
上記の要約に、本書が投げかけた本質的な問題が凝縮されている。ここ数年の世界経済のダイナミックで危うい動向をこれほど明快に分析し説明した著作を私は知らない。新自由主義思想への無邪気な信奉と登場後しばらくの小泉構造改革への拍手もまた私自身のものだった。ブッシュ政権の一国主義にはじまり一神教にも似たアメリカ的グローバリズムへの疑問、「製造業派遣」等、小泉構造改革がもたらした弊害や格差社会の悲惨な現実を目の当たりにするにつけ、私の中でもグローバリズムからの「転向」を意識するようになっていた。本書は私のそうした認識を決定的に裏付ける明快な拠りどころとなった。今この著作が爆発的に売れていると言う。私同様、「構造改革」という名のモンスターに多くの国民が気づき始めているのだろうか。
『1980年前後から始まった「サッチャリズム」、「レーガノミックス」は、「新自由主義思想」から生まれた。それは「小さな政府」「市場原理」「自己責任」を軸としてあらゆる経済活動をマーケット・メカニズムの調整に委ねることが、経済効率の向上とダイナミズムをもたらすというものである。個々人が自己責任に基いて競争する社会こそが健全であり、人々を幸福にし、経済を発展させるという考え方である。それは1991年のソ連崩壊によって、その正しさが証明されたという印象を大多数の人々に与えた。ソ連崩壊に伴い東側諸国にも資本主義原理が導入されるようになったことで、世界経済は急速に一体化していった。これを受けて中国やベトナム等の社会主義国でも経済の「改革・開放」が行なわれるようになった。かくして人類は「グローバル・マーケット」の時代に突入し、グローバル資本主義という人類そのものを滅ぼしかねないモンスターを産み出してしまったのではないか。
1980年代後半の日米通商摩擦では、新自由主義思想を背景にアメリカ政府は、閉鎖的な日本の市場を開放するための構造改革の早急な実施を要求した。この新自由主義思想が日本で市民権を得たのが「小泉構造改革」だった。「五五年体制」と呼ばれる既得権益構造をぶち壊し、日本経済のグローバル化を公約に掲げて登場した小泉政権は国民の驚異的な支持率を獲得した。
こうした大きな歴史の流れの中で著者は、この「構造改革」の急先鋒の一人だったと述懐する。著者が主要メンバーだった小渕内閣の「経済戦略会議」の提言のいくつかが小泉構造改革にそのまま盛り込まれたことで、間接的ながら「小泉構造改革の片棒を担いだ男」だったと吐露している。』
上記の要約に、本書が投げかけた本質的な問題が凝縮されている。ここ数年の世界経済のダイナミックで危うい動向をこれほど明快に分析し説明した著作を私は知らない。新自由主義思想への無邪気な信奉と登場後しばらくの小泉構造改革への拍手もまた私自身のものだった。ブッシュ政権の一国主義にはじまり一神教にも似たアメリカ的グローバリズムへの疑問、「製造業派遣」等、小泉構造改革がもたらした弊害や格差社会の悲惨な現実を目の当たりにするにつけ、私の中でもグローバリズムからの「転向」を意識するようになっていた。本書は私のそうした認識を決定的に裏付ける明快な拠りどころとなった。今この著作が爆発的に売れていると言う。私同様、「構造改革」という名のモンスターに多くの国民が気づき始めているのだろうか。
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