尼崎・認知症フォーラムの数々の貴重な情報2018年05月13日

 認知症ケアをテーマとした盛りだくさんのフォーラムが阪神尼崎駅近くのあましんアルカイックホール・オクトで開催された。正式な名称は「第20回 生と死を考える市民フォーラム」という地元の著名な在宅医である長尾和宏医師を中心としたフォーラムである。朝10時半から昼食時間を挟んで16時までの長時間のフォーラムだった。800席を擁する会場を埋め尽くす来場者だった。
 冒頭、進行役の長尾医師に紹介されて稲村尼崎市長が祝辞を述べる。続いて今、介護関係者に話題の映画「ケアニン」が上映された(鑑賞料500円)。若い新米の男性介護士の小規模介護施設での奮闘ぶりを通して介護の在り方や家族の関わり方を問うた作品だった。タイトルのケアする人(介護士)をもじった「ケアニン」は「仕事人」をイメージさせ「ケアのプロ」とは何かを暗示している。認知症介護という誰もが直面する問題を考える上で多くの貴重なヒントが得られる作品だった。
 昼食後、フォーラムが始まった。長尾医師による「認知症の基礎知識」をテーマとした30分の基調講演は、スピーチと介護ビデオ上映と替え歌披露といったバラエティショーの趣きだった。
 続いて「感情に働きかけるケア」をテーマに介護のプロと思える加藤忠相氏の1時間余りの特別講演があった。氏は映画「ケアニン」のモデルとなった小規模多機能型居宅介護施設「あおいけあ」の社長である。東北福祉大学社会教育学科を卒業後就職した特養の現場にショックを受け3年後に退社し27歳で現・介護施設を起業。以来44歳の今日まで介護の在り方について真正面から向き合う。ケアニンの施設社長のモデルである。①原因病②症状③行動という認知症介護の各分野について「行動」を問題にし管理し拘束する介護の実態を否定する。何よりも「原因病」に働きかけること(寄り添いやその人らしさの自立支援)を大切にする。また「症状」に対して当事者の性格、素質や心理状態をもとにコミュニケーションを重視する。説得力のある講演だった。
 次にメディア等でも話題の若年性認知症当事者・丹野智文氏の登壇である。「僕、認知症です」をテーマに講演原稿を読み上げる形の30分余りのスピーチだった。「認知症当事者にとって大切なのは人と人とのつながりであり介護者をパートナーと考えられる関係」「できることを奪わないで!」「なぜ失敗したのかは分からなくても失敗したことは分かっている」「認知症カフェも大切だが、当事者同士で語り合えるオレンジドアが拡がってほしい」等々の言葉に注目した。
 最後はこれまでの登壇者に地元のケアマネ、訪問看護士、福祉士、薬剤師を代表する専門職が加わって長尾医師を進行役に「尼からシンポジュウム」となった。 「専門職は自身の専門分野にのみ目を奪われがち。もっと患者という人や生活をみるべき」「認知症当事者が一緒に意思決定ができる機会を」「認知症になって当たり前の世の中がくる。認知症はマイノリティでなくメジャーになる時代にどう備えられるか」等の話に共感した。
 長時間の貴重な情報をいっぱい手にして帰路についた。