民営化の「落とし子」”プリゴジンの乱”2023年06月29日

 ロシアの民間軍事会社ワグネルによる”プリゴジンの乱”が勃発し、世界中が固唾を呑んで成り行きを注目した。
 ロシアによるウクライナ侵攻とともにワグネルという得体のしれない軍事組織がメディアに登場するようになった。その組織が”民間軍事会社”であることを知って驚愕した。「民間会社が軍隊を経営する?そんなバカな!異常な究極の民営化ではないか」。
 「軍隊とは、国家の機関として組織され、責任ある指揮体系のもとで、国家の行為としての戦闘に、一定の権利義務をもって、公然と兵器を携えて従事する集団をいう(コトバンク)」。
 これが常識的な「軍隊」の定義のようだ。軍隊は国家の指揮系統のもとでの関りという点でその存在が理解される組織だろう。
 ロシアでも違法とされている民間軍事会社ワグネルは、プーチン大統領が軍隊が扱い難い汚れ役を担わせるために支援している”プーチンの私兵”とみられている。ワグネルを率いるプリコジンは自身が強盗、詐欺等で9年間刑務所で過ごした犯罪者である。実際、彼に率いられたワグネルはロシアが関わる世界各地の紛争地で残虐な戦争犯罪を行っている。ロシアで受刑中の犯罪者を「6カ月働けば自由になる」とウクライナの戦場に送っているのもプリゴジンならではの手法だろう。
 その”プーチンの私兵”が牙をむいた。国家の管理する軍隊でないだけに対処も単純ではない。本来あってはならない「軍隊の民営化」という手法が生み出した「落とし子」である。独裁国家の大統領だからこそ手を染められた手法だろう。”プリゴジンの乱”は民営化の「落とし子」の「光」を享受してきたプーチンの「影」の部分を余すことなく照らしている」。