映画「痛くない死に方」2021年03月12日

 敬愛する町医者・長尾医師原作の映画「痛くない死に方」を観た。3年前に原作を読んでいた。原作では特に「痛くない死に方には緩和医療の知識と理解のあるかかりつけ医を見つけておくこと。緩和ケアがしっかりできないと在宅看取りには至らない。それにはかかりつけ医の在宅看取り数が目安となる」といったことを学んだ。この映画のテーマもせんじ詰めればその点を映像化したものと思えた。
 物語は前半と後半に二人の末期の癌患者の終末期医療の進行の様子を描きながら展開する。若い在宅医師の河田(柄本佑)が二人の在宅医療を担当する。前半のクライマックスでは、末期肺癌の父親を自分の意向で自宅で介護することを選択した娘の想いが河田に突き刺さる。“痛くない在宅医”を選んだはずなのに、結局“痛い在宅医”だったという非難の言葉だった。
 後半は、河田が2年後に担当することになった末期の肝臓がん患者である本多彰(宇崎竜童)の終末期医療の物語である。前半とは打って変わり自信を持って患者と向き合う河田が登場する。ジョークと川柳が好きで、末期がんの患者とは思えない明るい本多と、明るく寄り添う妻・しぐれ(大谷直子)との触れ合いに心和まされる。河田が勤務するクリニック院長・長野(奥田英二)の「カルテでなく人を見ろ」という言葉が生きている。そして本多は、河田や妻に看取られながら自宅で見事な「痛くない死に方」を全うする。
 本多の終末期の楽しみだった終末川柳が興味深かった。記憶に残った二句を記しておく。
 「まるはげの 主治医が勧める 抗がん剤」「自尊心 紙のおむつが  
 踏みつぶす」