オヤジの英断! 錦水亭・たけのこ会席2008年05月04日

 定期購読誌「ほんとうの時代」5月号の「京の老舗・食彩めぐり」の連載で長岡天神の『錦水亭・たけのこ会席』が紹介されていた。長岡京市は、25年前まで我が家が10年間住んでいた街である。住いから徒歩10分ばかりのところのにあった長岡天神は、家族でしばしば散策した場所だ。境内の一角を占める八条ケ池の畔に建つ老舗料亭・錦水亭の情緒のある風情が懐かしい。当時でも有名だった「錦水亭・たけのこ会席」は、到底手の届かない高嶺の花だった。
 私のリタイヤが目前である。娘の転職も無事決り今月から出勤を始めた。家族にとっての節目の時期といえる。この際、我が家のイベントのつもりで思い切って「錦水亭・たけのこ会席」を味わおうと思った。代金は私の小遣いのプール金(早い話がヘソクリ)で賄うという大胆な提案に家内と娘はすぐに乗ってきた。ひとり1万2千円の「たけのこづくしのコース」を予約した。これが最低価格メニューなのだ。
 マイカー、JR、阪急電車と乗り継いで長岡天神駅に到着した。徒歩数分の長岡天神本殿で参拝を済ませ、予約時間の11時30分に錦水亭の玄関前に立った。本館2階の広間に案内され、見晴らしの良い窓際のテーブル席に着席した。旬の季節の筍専門料亭である。高価なメニューにもかかわらずお年寄りを中心に次々に予約客が案内され、見る間に10数席のテーブルが埋められていく。
 最初に運ばれたのは、木の芽あえ、のこ造り(刺身)、三色味噌の田楽である。娘と分け合ったビールの格好のあてになる。続いて「じきたけ」と呼ばれる大振りの根元部分を鰹出汁で炊いた煮物と若竹のすまし汁が登場する。かぶりついた「じきだけ」から滲み出る出汁と筍のうまみがたまらない。竹篭に盛られた竹の皮に包まれた焼竹は醤油味の香ばしい烏賊焼きにも似た逸品だった。柔らかい若竹を練り物でくるんだ蒸し竹、三色天婦羅と酢の物と続く。最後に運ばれたのが「のこめし」と名づけられた筍ご飯、香の物、メロンである。のこめしの薄味ながらこくのある味わいに、思わず向かいの母娘から「美味しい」の呟きが洩れる。同感だった。
 十品にも及ぶ創作筍料理の数々は、すべて自家栽培の竹林で堀り出されたばかりの新鮮な筍を素材にしたものだ。さすがという他はない老舗の伝統を偲ばせる味わいだった。1時間40分余りのたっぷりj時間をかけていただくコース料理である。4人以上なら八条池の畔に建つ池座敷での会食が可能である。水面に浮ぶ絶好のロケーションでの会食はひと味違う趣きだったろうと悔やまれる。
 老舗料亭の季節感溢れる高価な昼食という我が家の節目のイベントが、太っ腹オヤジの英断であがなわれた。期待したその夜の献立のショボサに英断が報われなかったことを知らされた。

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