藤沢周平著「闇の穴」2011年07月11日

 次の読書を何にするか迷っていたら、7月2日封切りの映画「小川の辺(ほとり)」の新聞広告を目にした。原作は藤沢周平の同名小説で新潮文庫の「闇の穴」所蔵作品とある。書棚を探すとやっぱりあった。原作を読んで映画を見ようと思った。
 その原作を含む7編の短編をおさめた「闇の穴」を読んだ。7編のうち冒頭の2編「木綿触れ」「小川の辺」は武家物で、次の三編「闇の穴」「閉ざされた口」「狂気」は町民社会のミステリー風物語である。最後の2編「荒れ野」「夜が軋む」は民話風のホラー時代物といった趣きの作品だった。作者の多彩な才能を味わえる短編集である。
 個人的には何といっても藤沢文学の真骨頂たる武家物の冒頭2編が面白かった。とりわけ冒頭の「木綿触れ」は、下級武士の苦悩と葛藤そして武士の矜持が短編の中に凝縮して描かれている。「小川の辺」は主人公三人の人物設定は面白いが、物語としての奥行きは感じられない。ただ舞台設定や限定された登場人物の相克という点で映像化するには格好の素材だと思われた。
 昨日読了した。今日の午前中に大阪で労働委員会の会議がある。午後に映画「小川の辺」を見る格好の機会だった。迷った末、断念した。地域活動の処理事項が溜まっていたこともあるが、原作を読んでどうしても観たいという意欲が湧かなかったというのがホンネだった。

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