なでしこがジャパンに与えた感動2011年07月18日

 感動の一瞬だった。3月11日以降、日本人はこんな感動を忘れていたのではないか。それほど貴重なシーンを目の当たりにした。2011年7月18日の早朝、サッカー女子ワールドカップのファイナルゲームである。PK戦の4回目の攻防を若い熊谷がゴールして3:1で制した瞬間だった。誰もいないリビングで思わず「ヤッタ~ッ」と叫んでいた。
 今朝未明の3時過ぎに目覚めた。すぐにベッドサイドのテレビをつけた。3時からの放映だと思っていた女子サッカーW杯の中継がない。番組画面で確かめると3時半からだった。辛抱できずに眠ってしまい次に目覚めたのは4時半頃だった。中継中のテレビにゲームの画面はない。前半を0:0で終えて休憩中だった。ヨカッタ~ッ。世界チャンピオン相手に互角で折り返したのだ。リビングに降りてじっくり中継に見入った。
 後半に入りゲームが動いた。怒涛のようなアメリカの攻撃に先制された時は、やっぱりアカンかと思わせられた。ところがここからなでしこの驚異的な粘りが発揮される。後半36分、ゴール前のこぼれ球を宮間が見事に押し込み延長戦に持ち込んでしまった。延長線でも先制したのはアメリカだった。延長前半の終了間際に得点され、後半も残り時間3分余りと敗色濃厚となった時だ。コーナーキックをキャップテン澤が鮮やかに奇跡的なゴールを決めた。そしてPK戦での感動の勝利の瞬間を迎えた。
 体力、高さ、実績でなでしこを上回るアメリカ戦は、表面的な強がりのコメントはいざ知らず誰もが不利を覚悟していた筈だ。実際ゲーム展開は終始アメリカ優位で進んだ。誰もが敗戦を覚悟せざるをえないようなそのゲームを二度も瀬戸際で追いつきPK戦というドラマチックな展開に持ち込んだ。PK戦に体力、高さ、実績は通用しない。それはまぎれもなく精神力の勝負だ。この勝負に日本は見事に勝利した。これ以上ない感動をもたらすゲーム展開の末の勝利だった。
 このゲーム展開の勝利だからこそ未曽有の大震災に打ちひしがれた日本人に与えた感動は大きい。何度も瀬戸際の危機に追い込まれながら、なでしこたちの粘り強さとタフな精神力でその都度それを跳ね返し最後の最後に勝利した。それは大震災、津波、原発事故という危機の連鎖に見舞われた最悪の事態を跳ね返し、最後には復興を果たす日本人の粘りと精神力を象徴しているかにみえる。そして震災対応を巡って日本人の意識が大きく分散する中で、この勝利の瞬間は間違いなく日本人の心をひとつに結びつけたにちがいない。なでしこたちが心をひとつにして目標に向い達成したことをあらためて思い知らされた。
それこそが「なでしこがジャパンに与えた感動」の正体ではなかったか。