難民選手団!東京五輪の大会ビジョンの意義2021年08月02日

 東京オリンピックも半ばを過ぎて、前半の日本チームの健闘ぶりに国内世論は盛り上がっている。反面でコロナ感染拡大下の五輪はマイナスイメージも同居する。そんな中でメディアで取り上げられることが少なく注目されていないが積極的な意義のある話題がある。”難民選手団”である。
 難民選手団とは、シリアや南スーダン、コンゴなど紛争地域を逃れ難民となった人々で構成された選手団だ。2016年のリオデジャネイロ五輪で初めて結成された。昨今何かと評判の悪いIOCだがこの難民選手団のIOCによる創設と基金の拠出は評価されるべきだろう。世界中の難民にとっての希望の象徴であり、国際的な難民危機についての知識と関心を高める役割を果たしている。
 東京オリンピックの難民選手団は、水泳や陸上、柔道、空手など12競技あわせて29人で現在はドイツやイギリス、ケニアなどで生活している難民たちだ。国家に所属しない難民選手団は五輪旗を掲げて参加しユニフォームにはEOR(オリンピック難民チームを意味するフランス語の頭文字)の文字が描かれる。
 東京五輪の大会ビジョンは「多様性と調和」であるという。このビジョンに照らしても難民選手団の意義は極めて重大だ。ところがJOCや日本政府の難民選手団についてのメッセージはいかにも乏しい。背景には日本の難民政策の貧弱さと難民受け入れの消極性があるとしか思えない。今年3月に名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)でスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが不可解な経緯と状況で亡くなった。遺族や支援者の入管と所管する法務省への抗議や真相究明に所管部署は拒否の姿勢を貫いている。
 難民選手団の政府のアナウンスの希薄さは、難民政策やスリランカ女性の死亡に国民の注目をそらしたいという思惑が透けて見えてしまう。