地元長老の2年ぶりの公民館講座 ― 2014年10月01日
昨日の午後、山口公民館講座「江戸時代の貢租」を受講した。講師は山口町名来在住の郷土史研究家・橋本芳次さんである。個人的にも「HPにしのみや山口風土記」の執筆で何度か教えを乞うた方だ。もうすぐ93歳になるという大長老は、今も名来歴史研究会の講師を続け、郷土史研究に余念がない。今回は、研究会メンバーが講師のテキスト原稿をパワーポイントに編集し、講演と並行してプロジェクターで紹介するという新たな試みも行われた。郷土史に関心を寄せるお年寄りたち50名近くが受講した。テーマである江戸時代の貢租(年貢)の種類や内容が、以下のように山口の事例を中心に詳細に語られた。
・年貢の基本は本途物成(ほんとものなり)と呼ばれる本年貢である。検地帳に登録された田畑や屋敷(敷地)に掛けられた。吉宗の享保の改革を境に四公六民が五公五民に変更された。
・小物成(こものなり)と呼ばれる雑年貢もあった。「茶代・柿(串柿)代」(お茶の木や柿の木ごとに掛けられた年貢)、「山手米(山年貢)」(腐葉土や小柴が得られる村の共有林に掛けられた年貢で、共有林は徳風会の財産に引き継がれた)、「運上・冥加銀(浮物)」(各種の販売に掛かる営業税で、紙漉運上銀、水車運上銀、酒造冥加銀、松茸運上銀など)があった。
・この他、山口各村の多くが幕府領だったことから幕府領特有の年貢である「高掛三役(たかがかりさんやく)」という年貢があった。
・高掛三役には「御伝馬宿入用」(宿駅の経費負担金)、「六尺給米」(江戸城内の六尺ふんどしと呼ばれる雑役夫給与の負担金)、「御蔵前入用」(江戸の米蔵の管理費用分担金)があった。
・これ以外に臨時の年貢として「国役銀」(淀川改修等の国家的事業や家康法要等の国家的行事実施のための特別税)、「助郷役」(宿駅の人馬の不足を補充するための課税)があった。
最後のところで講師が「腹具合が悪い」とトイレに中座されるというハプニングがあったものの予定時間を15分残して講座が終了した。私も含めて二人から質問があった。そのやりとりの中で講師の次のような印象的な発言をお聞きした。「30年近く研究してきた郷土史の中でも、とりわけ江戸時代は現代に通じる貴重な歴史だ。今後の町起こしを考える上でも江戸時代の郷土史の研究は続けたい。あわせて誰かがこの研究をぜひ継承してほしい」。
・年貢の基本は本途物成(ほんとものなり)と呼ばれる本年貢である。検地帳に登録された田畑や屋敷(敷地)に掛けられた。吉宗の享保の改革を境に四公六民が五公五民に変更された。
・小物成(こものなり)と呼ばれる雑年貢もあった。「茶代・柿(串柿)代」(お茶の木や柿の木ごとに掛けられた年貢)、「山手米(山年貢)」(腐葉土や小柴が得られる村の共有林に掛けられた年貢で、共有林は徳風会の財産に引き継がれた)、「運上・冥加銀(浮物)」(各種の販売に掛かる営業税で、紙漉運上銀、水車運上銀、酒造冥加銀、松茸運上銀など)があった。
・この他、山口各村の多くが幕府領だったことから幕府領特有の年貢である「高掛三役(たかがかりさんやく)」という年貢があった。
・高掛三役には「御伝馬宿入用」(宿駅の経費負担金)、「六尺給米」(江戸城内の六尺ふんどしと呼ばれる雑役夫給与の負担金)、「御蔵前入用」(江戸の米蔵の管理費用分担金)があった。
・これ以外に臨時の年貢として「国役銀」(淀川改修等の国家的事業や家康法要等の国家的行事実施のための特別税)、「助郷役」(宿駅の人馬の不足を補充するための課税)があった。
最後のところで講師が「腹具合が悪い」とトイレに中座されるというハプニングがあったものの予定時間を15分残して講座が終了した。私も含めて二人から質問があった。そのやりとりの中で講師の次のような印象的な発言をお聞きした。「30年近く研究してきた郷土史の中でも、とりわけ江戸時代は現代に通じる貴重な歴史だ。今後の町起こしを考える上でも江戸時代の郷土史の研究は続けたい。あわせて誰かがこの研究をぜひ継承してほしい」。
高齢者宅の固定電話の行く末 ― 2014年10月02日

民生委員の高齢者実態調査で担当地区の高齢者を訪ねている。実際に地域の皆さんと個別にお話しすることで分かってくることがある。
今回の訪問では、民生委員に提供して貰っている自宅の電話番号をボランティアセンターでも登録させて貰えるかをお訊ねしている。今後、ボランティアセンターからの電話による見守り訪問実施のためだ。するとあるお宅でこんな返事が返ってきた。「実は自宅電話は廃止した。日常電話する家族や知人もみんな携帯電話になり、固定電話はほとんど使わない。それでいてかかってくるのは業者の煩わしい商品売込みばかりだから。以前提供した番号も携帯番号に変え貰いたい」と携帯番号を教えて頂いた。
娘夫婦の自宅には固定電話はない。携帯電話が当たり前の時代に世帯を持った若い夫婦の家庭ではさもありなんと納得していた。ところが今やその流れはお年寄り家庭にも及んでいる。経済的理由ということでなく、無作為にかかってくる業者電話の煩わしさ故である。確かに日中にひとりで在宅している時の業者電話の鬱陶しさは身に沁みている。
今後、お年寄り家庭からも固定電話が徐々に消えていくのだろう。見守りの電話訪問に備えて新たな課題が浮上した。タブレット端末の普及がその代替機能を果たすのだろうか。
今回の訪問では、民生委員に提供して貰っている自宅の電話番号をボランティアセンターでも登録させて貰えるかをお訊ねしている。今後、ボランティアセンターからの電話による見守り訪問実施のためだ。するとあるお宅でこんな返事が返ってきた。「実は自宅電話は廃止した。日常電話する家族や知人もみんな携帯電話になり、固定電話はほとんど使わない。それでいてかかってくるのは業者の煩わしい商品売込みばかりだから。以前提供した番号も携帯番号に変え貰いたい」と携帯番号を教えて頂いた。
娘夫婦の自宅には固定電話はない。携帯電話が当たり前の時代に世帯を持った若い夫婦の家庭ではさもありなんと納得していた。ところが今やその流れはお年寄り家庭にも及んでいる。経済的理由ということでなく、無作為にかかってくる業者電話の煩わしさ故である。確かに日中にひとりで在宅している時の業者電話の鬱陶しさは身に沁みている。
今後、お年寄り家庭からも固定電話が徐々に消えていくのだろう。見守りの電話訪問に備えて新たな課題が浮上した。タブレット端末の普及がその代替機能を果たすのだろうか。
名塩の進取の気風 ― 2014年10月03日
記事掲載の左の写真は50数年前の名塩の街並みを写したものである。名塩財産区発行の「名塩史」掲載写真である。旧街道を挟んで昔ながらの家並みが軒を連ねる牧歌的な光景が切り取られている。もう一枚の写真は40年前の国土地理院の名塩の旧集落を中心とした航空写真である。山並みに囲まれた狭隘な地形に、旧街道を挟んで密集する集落の様子がよく分かる。他方で集落の南側を東西に太く貫く中国道と集落の東西で始まっている大型住宅開発の槌音が、変貌する名塩の姿を窺わせている。
10月7日の公民館講座「隣町風土記・名塩」のパワーポイントテキストの作成を終えた。あらためて講座のテーマ「進取の町・名塩」を噛み締めた。その狭隘な地形が育んだ「進取の気風」を想った。地形の苛酷さ故に、生き延びるための因習にとらわれない大胆で柔軟な方策を選択してきた。
わずか24戸の寒村が、戦国の苛斂誅求の世を生き延びるために蓮如に帰依し、大胆でひたむきな救いを求める行動に駆り立てた。田畑の狭さ故に村の新たな生業を求めて、紙漉きの技術を修得する苦難の旅路を選んだ。紙漉きで得た「名塩千軒」の財力を蘭学という先進文化の吸収と育成のために惜しげもなく拠出する。名塩の篤農家の名家が理想の農場づくりを掲げて、一家をあげてブラジル奥地の未開の地に移り住む。ベッドタウン開発という時代の潮流のなかで、有利な立地を生かし集落周辺の大規模な住宅開発で地域の活性化をはかる。壇尻の巡行・宮入りという伝統行事の維持のためには、壇尻運行の女人禁制の因習も糺すことを厭わない。
名塩の歴史と風習を辿る中で知った数々の「進取」の足跡である。名塩の歴史と風土は「進取の気風」に支えられてつくられたといって過言ではない。
10月7日の公民館講座「隣町風土記・名塩」のパワーポイントテキストの作成を終えた。あらためて講座のテーマ「進取の町・名塩」を噛み締めた。その狭隘な地形が育んだ「進取の気風」を想った。地形の苛酷さ故に、生き延びるための因習にとらわれない大胆で柔軟な方策を選択してきた。
わずか24戸の寒村が、戦国の苛斂誅求の世を生き延びるために蓮如に帰依し、大胆でひたむきな救いを求める行動に駆り立てた。田畑の狭さ故に村の新たな生業を求めて、紙漉きの技術を修得する苦難の旅路を選んだ。紙漉きで得た「名塩千軒」の財力を蘭学という先進文化の吸収と育成のために惜しげもなく拠出する。名塩の篤農家の名家が理想の農場づくりを掲げて、一家をあげてブラジル奥地の未開の地に移り住む。ベッドタウン開発という時代の潮流のなかで、有利な立地を生かし集落周辺の大規模な住宅開発で地域の活性化をはかる。壇尻の巡行・宮入りという伝統行事の維持のためには、壇尻運行の女人禁制の因習も糺すことを厭わない。
名塩の歴史と風習を辿る中で知った数々の「進取」の足跡である。名塩の歴史と風土は「進取の気風」に支えられてつくられたといって過言ではない。
「リタイヤオヤジの居場所づくり」講座 ― 2014年10月04日
民生委員の高齢者訪問を精力的にこなしている。実際に訪問してあらためて思い知らされることがある。そのひとつに、お訪ねした先でリタイヤされたご主人が応対される事例が増えてきたことがある。団塊世代のリタイヤがヤマ場を迎えているという点も背景にあるのだろう。
やりとりを交わしながら脈ありと思ったら、超高齢化した住宅街の実態を伝え、元気な高齢男性の地域活動への参加のお誘いといった突っ込んだ話もする。もちろんコトはそれほど簡単ではない。地域活動よりも現役時代の延長での仕事に短時間でも関わりたいという色気がたっぷりある。とはいえ奥さんとの関係からも近い将来は地域での居場所が必要なことの自覚はある。ただ如何せん地域に人脈やとっかかりがないのも現実だ。
先日のボランティアコーディネーター会議で、リタイヤした男性のボランティア活動参加の促し方が話題になった。市のボランティアコーディネーター連絡会の報告で、ある地区で男性向けの「ボランティア活動入門講座」を開催したところ大勢の参加者があり10名余りのボランティア登録者があったとのことだ。「これや!」と思った。リタイヤしたばかりの元気な高齢男性たちのニーズに適った講座なのだろう。我が地区でもぜひとも開催しようという前向きな受け止め方が大勢だった。
そんな背景もあって、訪問先のリタイヤされたご主人たちと早速話題にした。「活動の具体的なメニューも含めたボランティア活動入門講座のような講座を開催したら参加してもらえますか」という提案に、前向きな反応が返ってきた。いきなりボランティアでなく、ひとまず講座に参加し自分に合うかどうか見極めようということだ。それはそれで貴重な第一歩に違いない。
来年2月には、地区の福祉ネットワーク会議設立をめざしている。自治会、社協、民生委員、老人会、ボランティアセンターなど地域で高齢者福祉に関わる組織・役職の連携組織の立上げである。福祉ネットの重要なテーマに地域ボランティアの人材発掘がある。立上げ後の福祉ネットの重点活動に「男性向け地域ボランティア入門講座(リタイヤオヤジの居場所づくり講座)」を提案しよう。
やりとりを交わしながら脈ありと思ったら、超高齢化した住宅街の実態を伝え、元気な高齢男性の地域活動への参加のお誘いといった突っ込んだ話もする。もちろんコトはそれほど簡単ではない。地域活動よりも現役時代の延長での仕事に短時間でも関わりたいという色気がたっぷりある。とはいえ奥さんとの関係からも近い将来は地域での居場所が必要なことの自覚はある。ただ如何せん地域に人脈やとっかかりがないのも現実だ。
先日のボランティアコーディネーター会議で、リタイヤした男性のボランティア活動参加の促し方が話題になった。市のボランティアコーディネーター連絡会の報告で、ある地区で男性向けの「ボランティア活動入門講座」を開催したところ大勢の参加者があり10名余りのボランティア登録者があったとのことだ。「これや!」と思った。リタイヤしたばかりの元気な高齢男性たちのニーズに適った講座なのだろう。我が地区でもぜひとも開催しようという前向きな受け止め方が大勢だった。
そんな背景もあって、訪問先のリタイヤされたご主人たちと早速話題にした。「活動の具体的なメニューも含めたボランティア活動入門講座のような講座を開催したら参加してもらえますか」という提案に、前向きな反応が返ってきた。いきなりボランティアでなく、ひとまず講座に参加し自分に合うかどうか見極めようということだ。それはそれで貴重な第一歩に違いない。
来年2月には、地区の福祉ネットワーク会議設立をめざしている。自治会、社協、民生委員、老人会、ボランティアセンターなど地域で高齢者福祉に関わる組織・役職の連携組織の立上げである。福祉ネットの重要なテーマに地域ボランティアの人材発掘がある。立上げ後の福祉ネットの重点活動に「男性向け地域ボランティア入門講座(リタイヤオヤジの居場所づくり講座)」を提案しよう。
広井良典著「定常型社会」(所感) ― 2014年10月05日

一カ月ほど前に水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」の所感を記事にした。http://ahidaka.asablo.jp/blog/2014/08/31/ 記事では著作の「資本主義システムに代わる新たな社会システムについての具体像は提示されていない点」を念頭に、その点が具体化された著作として広井良典著「定常型社会」に言及した。そしてその「定常型社会」の書評を5回に渡って記事にした。著作の章ごとの要約といってよいこれまでの記事に対し、今回は私自身の著作についての所感を述べる。
この著作の経済政策論としての基調は、「持続可能な福祉国家/福祉社会」という点である。それは1980年代以降に着手され世界的な潮流になったかに思えるサッチャリズムやレーガノミクスに代表される「新自由主義的政策」による「ケインズ主義福祉国家の解体(=小さな政府)」路線に対する建設的な対抗軸の提示である。新自由主義が目指す規制緩和、グローバリズムを通じた市場原理主義による経済成長路線が直面した限界と制約を、「持続可能な」福祉国家/社会(=定常型社会)によって克服しようという意欲的な政策提言である。
この著作で得られた大きな収穫のひとつに、「定常型社会」では伝統文化や伝統行事といった「変化しないもの」に本質的な価値を置くとい視点を提示された点がある。従来の経済政策では「伝統」という変化しないもの(付加価値が追加されないもの)は正当な評価の対象とはみなされなかったように思う。新自由主義の立場に立てば観客動員(=チケット売上を目安とした商品価値)の不十分な「伝統」は切り捨てられることになる。著作の最終章で提示された「根源的な時間の発見」という視点で、「個人―共同体―自然」という位相に対応した「経済/市場の時間」→「コミュニティの時間」→「自然の時間」というの三つの時間層のよりゆっくりと、より永続的な時間の発見の重要性が語られる。それは人類が「成長」をめざして歩んできた「離陸」の方向から脱却し、むしろ「市場/経済」の根にある「共同体」そして「自然」へと結びつけていく「着陸」の方向に向かう営みである。
水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」がインパクトのあるセンセーショナルなタッチの著作だったのに比べ、この著作は冷静で実証的なタッチで展開されている。それだけに随所に日常生活との対比で納得させられる分析や記述で惹きつけられる。何よりも新自由主義が跋扈する今日の政治経済状況にあって、あらためて「定常型社会」という新たなコンセプト(それはある種の文明観といってもよい)こそが有力な対抗軸になるものと思えた。
この著作の経済政策論としての基調は、「持続可能な福祉国家/福祉社会」という点である。それは1980年代以降に着手され世界的な潮流になったかに思えるサッチャリズムやレーガノミクスに代表される「新自由主義的政策」による「ケインズ主義福祉国家の解体(=小さな政府)」路線に対する建設的な対抗軸の提示である。新自由主義が目指す規制緩和、グローバリズムを通じた市場原理主義による経済成長路線が直面した限界と制約を、「持続可能な」福祉国家/社会(=定常型社会)によって克服しようという意欲的な政策提言である。
この著作で得られた大きな収穫のひとつに、「定常型社会」では伝統文化や伝統行事といった「変化しないもの」に本質的な価値を置くとい視点を提示された点がある。従来の経済政策では「伝統」という変化しないもの(付加価値が追加されないもの)は正当な評価の対象とはみなされなかったように思う。新自由主義の立場に立てば観客動員(=チケット売上を目安とした商品価値)の不十分な「伝統」は切り捨てられることになる。著作の最終章で提示された「根源的な時間の発見」という視点で、「個人―共同体―自然」という位相に対応した「経済/市場の時間」→「コミュニティの時間」→「自然の時間」というの三つの時間層のよりゆっくりと、より永続的な時間の発見の重要性が語られる。それは人類が「成長」をめざして歩んできた「離陸」の方向から脱却し、むしろ「市場/経済」の根にある「共同体」そして「自然」へと結びつけていく「着陸」の方向に向かう営みである。
水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」がインパクトのあるセンセーショナルなタッチの著作だったのに比べ、この著作は冷静で実証的なタッチで展開されている。それだけに随所に日常生活との対比で納得させられる分析や記述で惹きつけられる。何よりも新自由主義が跋扈する今日の政治経済状況にあって、あらためて「定常型社会」という新たなコンセプト(それはある種の文明観といってもよい)こそが有力な対抗軸になるものと思えた。
初めてのネットオークションで落札 ― 2014年10月06日

老後スタイルの欠かせない分野に読書がある。毎日の早朝ウォーキング途中のマクドナルドでのコーヒー片手の読書は、かけがえのない楽しみである。蔵書の時代小説や歴史小説の再読の後は、ネットで購入した北方謙三の歴史小説に嵌っていた。愛読していた北方太平記モノを読み尽し次のジャンルを求めてネット検索していた。眼鏡にかなった作品が北方謙三の「史記・武帝紀全七巻(ハルキ文庫)」だった。但しこれは楽天オークションの出品商品だった。
ネット生活は個人ホームページを開設して以来17年に及ぶ。ネットショッピングも利用して数年以上になるが、ネットオークションだけはやったことがない。ある種の危うさを感じて敬遠していた。今回の買物では迷った末、入札した。何よりも2千円という価格がリタイヤ生活にはありがたい。新規購入すれば4.5千円はかかる。9月29日に入札し、締切日の今日、落札通知のメールがきた。結局、入札したのは私だけだったようだ。
メール記載のURLサイトで落札手続きを行った。送料510円に決済手数料100円を加えて計2610円だった。決済は全額保有していた楽天ポイントで処理した。いともあっけなく初めてのネットオークションを無事体験した。これはこれで老後スタイルの便利なツールかもしれない。膨れ上がった蔵書の処分を近い将来迫られる。その際の選択肢の一つになるかもしれない。
ネット生活は個人ホームページを開設して以来17年に及ぶ。ネットショッピングも利用して数年以上になるが、ネットオークションだけはやったことがない。ある種の危うさを感じて敬遠していた。今回の買物では迷った末、入札した。何よりも2千円という価格がリタイヤ生活にはありがたい。新規購入すれば4.5千円はかかる。9月29日に入札し、締切日の今日、落札通知のメールがきた。結局、入札したのは私だけだったようだ。
メール記載のURLサイトで落札手続きを行った。送料510円に決済手数料100円を加えて計2610円だった。決済は全額保有していた楽天ポイントで処理した。いともあっけなく初めてのネットオークションを無事体験した。これはこれで老後スタイルの便利なツールかもしれない。膨れ上がった蔵書の処分を近い将来迫られる。その際の選択肢の一つになるかもしれない。
高齢者訪問よもやま話 ― 2014年10月07日
先週一週間、民生委員の高齢者実態調査のために集中的に高齢者宅をお訪ねした。180軒余りのお宅の内、留守宅だった20軒弱を残してほぼ一巡した。
7年前に民生委員就任後、回を重ねた訪問で懇意になった方も多い。普段でも道で会えばちょっとした立ち話を交わす方も増えてきた。気心が知れたおばあちゃんから打ち明け話を聞かされることもある。舐めてきた人生の辛酸を吐露されるのも、それなりに信頼を得てきた証左だろうと受け止めている。ご主人を亡くされたばかりの同年代の女性の涙にも素直に励ましの言葉がついて出る。70代後半のご夫婦を訪ねた時、ご主人が直腸癌の発症を告げられたばかりだと聞かされた。自分の皮膚癌発症の時の体験談で応じた。その時から死と向き合う覚悟のようなものができたように思うという述懐に共感して頂いた。
今回は、団塊世代を中心にリタイヤまもない男性たちと言葉を交わす機会も多かった。人口の突出したボリュームゾーンの中で生きてきた世代である。割を食った世代だという想いもある筈だ。それでも辛口のコメントを語らざるをえない。「人生の終盤でも割を食う事態が待ち構えています。10年後に皆さんが後期高齢者になる頃には病院のベッドや介護ケアの奪い合いが避けられません。行政は地域で支え合う在宅介護を押し付けています。地域にはそんな環境はできていません。今から10年後に向けてこの町の支え合いの環境づくりが不可欠です。元気な皆さんの地域活動参加を検討して下さい」。自分たちの世代が通り過ぎる場面ごとの社会へのインパクトは先刻承知の皆さんである。10年後の事態の理解は早い。関心は示してもらえるもの行動に結びつくまでには至らない。「男性向け地域ボランティア入門講座(リタイヤオヤジの居場所づくり講座)」を話題に話を締めくくる。
民生委員の高齢者訪問という役回りが、ご近所づきあいの希薄な新興住宅街にあっては、地域の繋がりづくりの機能を併せ持つということをあらためて実感した。
7年前に民生委員就任後、回を重ねた訪問で懇意になった方も多い。普段でも道で会えばちょっとした立ち話を交わす方も増えてきた。気心が知れたおばあちゃんから打ち明け話を聞かされることもある。舐めてきた人生の辛酸を吐露されるのも、それなりに信頼を得てきた証左だろうと受け止めている。ご主人を亡くされたばかりの同年代の女性の涙にも素直に励ましの言葉がついて出る。70代後半のご夫婦を訪ねた時、ご主人が直腸癌の発症を告げられたばかりだと聞かされた。自分の皮膚癌発症の時の体験談で応じた。その時から死と向き合う覚悟のようなものができたように思うという述懐に共感して頂いた。
今回は、団塊世代を中心にリタイヤまもない男性たちと言葉を交わす機会も多かった。人口の突出したボリュームゾーンの中で生きてきた世代である。割を食った世代だという想いもある筈だ。それでも辛口のコメントを語らざるをえない。「人生の終盤でも割を食う事態が待ち構えています。10年後に皆さんが後期高齢者になる頃には病院のベッドや介護ケアの奪い合いが避けられません。行政は地域で支え合う在宅介護を押し付けています。地域にはそんな環境はできていません。今から10年後に向けてこの町の支え合いの環境づくりが不可欠です。元気な皆さんの地域活動参加を検討して下さい」。自分たちの世代が通り過ぎる場面ごとの社会へのインパクトは先刻承知の皆さんである。10年後の事態の理解は早い。関心は示してもらえるもの行動に結びつくまでには至らない。「男性向け地域ボランティア入門講座(リタイヤオヤジの居場所づくり講座)」を話題に話を締めくくる。
民生委員の高齢者訪問という役回りが、ご近所づきあいの希薄な新興住宅街にあっては、地域の繋がりづくりの機能を併せ持つということをあらためて実感した。
公民館講座「隣町風土記・名塩」 ― 2014年10月08日
昨日の午後、山口公民館講座「隣町風土記・名塩」を開講した。一般受講者45名に公民館活動推進員7名を加えて計52名と過去9回の本講座中、最も多い受講者数だった。とりわけ名塩から4名の名塩探史会の皆さんをはじめ10名の受講者があったことに意を強くした。
山口の皆さんを対象とした講座ながら今回初めて山口以外の地域の風土記をテーマとした。過去6回の室内講座では一般受講者は平均32名だったが、今回はこれをかなり下回るのではないかという危惧があった。ふたを開ければそれは杞憂に過ぎなかった。「知って、歩いて、好きになる隣人」のキャッチコピーを紹介した。講座終了後に地元民生委員の知人から「ぜひ隣町風土記の続編をやってほしい」と励まされた。隣町を知りたいというニーズは予想以上に強いものがあるようだ。
今回の講座で伝えたかったものは「地形のもたらす風土や気風」という点だった。名塩の狭隘な地形が「進取の気風」を育んだ。ほぼ同じ人口規模の山口は、有馬川流域の比較的豊かな田畑と山林に恵まれた地形である。古来より豊かな土地の恵みを受け、稲作文化の伝統が引き継がれてきた。それだけに祖先への感謝の念とともに農村共同体としての伝統行事やしきたりが重んじられてきた。隣町でありながら名塩との気風の違いは大きい。象徴的なのは秋祭りの壇尻巡行での女性の登用をめぐる相違である。山口では壇尻に女の子が乗ることさえ許されないが、名塩では運行指揮者である若頭さえも若い女性が担っている。どちらがいいかということでなく地形が育んだ町の気風や風土の違いと言えよう。15分ほどの質疑の後、そんなコメントを締めくくりの言葉として講座を終了した。
山口の皆さんを対象とした講座ながら今回初めて山口以外の地域の風土記をテーマとした。過去6回の室内講座では一般受講者は平均32名だったが、今回はこれをかなり下回るのではないかという危惧があった。ふたを開ければそれは杞憂に過ぎなかった。「知って、歩いて、好きになる隣人」のキャッチコピーを紹介した。講座終了後に地元民生委員の知人から「ぜひ隣町風土記の続編をやってほしい」と励まされた。隣町を知りたいというニーズは予想以上に強いものがあるようだ。
今回の講座で伝えたかったものは「地形のもたらす風土や気風」という点だった。名塩の狭隘な地形が「進取の気風」を育んだ。ほぼ同じ人口規模の山口は、有馬川流域の比較的豊かな田畑と山林に恵まれた地形である。古来より豊かな土地の恵みを受け、稲作文化の伝統が引き継がれてきた。それだけに祖先への感謝の念とともに農村共同体としての伝統行事やしきたりが重んじられてきた。隣町でありながら名塩との気風の違いは大きい。象徴的なのは秋祭りの壇尻巡行での女性の登用をめぐる相違である。山口では壇尻に女の子が乗ることさえ許されないが、名塩では運行指揮者である若頭さえも若い女性が担っている。どちらがいいかということでなく地形が育んだ町の気風や風土の違いと言えよう。15分ほどの質疑の後、そんなコメントを締めくくりの言葉として講座を終了した。
50数年ぶりの大サーカス ― 2014年10月09日
イオンモール神戸北の駐車場で開催中の木下サーカスの招待券を入手した。公民館講座を終えて一息ついた昨日、家内と一緒にでかけた。
子供の頃に何度か観て以来だから50数年ぶりのサーカス見物である。当時のサーカスの思い出にはどこか物悲しさがつきまとう。祭りの日に境内のサーカス小屋で演じられたのは主に曲芸のたぐいだったと思う。空中ブランコなどの本格的な技に息を呑んだのはやっぱり木下サーカスだったと記憶している。それほどに木下サーカスは業界屈指の老舗のサーカスである。
水曜日2回目の13時40分からの公演だった。15分前に天井の高い巨大なテント会場に入場した。7割方の入場客数だった。上演中の撮影は禁止なので開演前の会場風景をシャッターに納めた。自由席の背もたれのない座り心地の悪い横板ベンチに座ってしばらくして指定席との決定的な違いに気づいた。指定席は前売2800円のチケット料金に観覧位置毎に1000円~2000円の追加料金が必要である。ステージの近さや見易さの違い以上に座席の座り心地の違いが大きい。指定席は背もたれのある独立した椅子である。休憩を含めて2時間20分もの時間を横板ベンチで過ごしてあらためて座席の格差を思い知らされた。
公演は多彩なステージで構成されている。吊りロープや布を使ったオープニングショーに始まり、キリン、シマウマ、像、ライオンなどの動物ショー、大型マジックのイリュージョン、綱渡りや足技曲芸の伝統芸、球体のホール内のオートバイショー、空中ブランコや空中アクロバットショーなどがBGMや照明デザインの巧みな演出をバックに繰り広げられる。8頭のライオンが調教師のムチのもとに披露する芸に驚きとともに一抹の憐憫を抱いた。男性マジシャンが入った筈の種も仕掛けもないボックスから美女が入れ替わって現れるというテレビでよく見るショーが目前で行われている。空中ブランコの飛び移りの刹那の妙技に思わず会場と一緒にオーというどよめきを発した。
隣の席には祖母に連れられた3歳位の女の子が愛らしい声をあげて見入っていた。時どき大好きな象さんを焦がれる呟きが聞こえた。公演終盤になってようやく象さんのショーが始まった。歓声を上げる筈の声が聞こえない。ナント女の子は待ちくたびれてぐっすり眠り込んでいた。おばあちゃんは必死になって「象さんやで!」と呼びかけるが一瞬たりとも目を開けない。思わず一緒に耳元に口を寄せて声を掛けた。「象さんやで!」。やっぱり女の子は眠ったままだった。
団員総出のフィナーレになった。20数名の団員が華やかにステージを巡った。固い椅子からの解放感と隣席の女の子の微笑ましさと50数年ぶりのサーカスの進化した迫力の余韻に浸りながらテントの出口に向かった。
子供の頃に何度か観て以来だから50数年ぶりのサーカス見物である。当時のサーカスの思い出にはどこか物悲しさがつきまとう。祭りの日に境内のサーカス小屋で演じられたのは主に曲芸のたぐいだったと思う。空中ブランコなどの本格的な技に息を呑んだのはやっぱり木下サーカスだったと記憶している。それほどに木下サーカスは業界屈指の老舗のサーカスである。
水曜日2回目の13時40分からの公演だった。15分前に天井の高い巨大なテント会場に入場した。7割方の入場客数だった。上演中の撮影は禁止なので開演前の会場風景をシャッターに納めた。自由席の背もたれのない座り心地の悪い横板ベンチに座ってしばらくして指定席との決定的な違いに気づいた。指定席は前売2800円のチケット料金に観覧位置毎に1000円~2000円の追加料金が必要である。ステージの近さや見易さの違い以上に座席の座り心地の違いが大きい。指定席は背もたれのある独立した椅子である。休憩を含めて2時間20分もの時間を横板ベンチで過ごしてあらためて座席の格差を思い知らされた。
公演は多彩なステージで構成されている。吊りロープや布を使ったオープニングショーに始まり、キリン、シマウマ、像、ライオンなどの動物ショー、大型マジックのイリュージョン、綱渡りや足技曲芸の伝統芸、球体のホール内のオートバイショー、空中ブランコや空中アクロバットショーなどがBGMや照明デザインの巧みな演出をバックに繰り広げられる。8頭のライオンが調教師のムチのもとに披露する芸に驚きとともに一抹の憐憫を抱いた。男性マジシャンが入った筈の種も仕掛けもないボックスから美女が入れ替わって現れるというテレビでよく見るショーが目前で行われている。空中ブランコの飛び移りの刹那の妙技に思わず会場と一緒にオーというどよめきを発した。
隣の席には祖母に連れられた3歳位の女の子が愛らしい声をあげて見入っていた。時どき大好きな象さんを焦がれる呟きが聞こえた。公演終盤になってようやく象さんのショーが始まった。歓声を上げる筈の声が聞こえない。ナント女の子は待ちくたびれてぐっすり眠り込んでいた。おばあちゃんは必死になって「象さんやで!」と呼びかけるが一瞬たりとも目を開けない。思わず一緒に耳元に口を寄せて声を掛けた。「象さんやで!」。やっぱり女の子は眠ったままだった。
団員総出のフィナーレになった。20数名の団員が華やかにステージを巡った。固い椅子からの解放感と隣席の女の子の微笑ましさと50数年ぶりのサーカスの進化した迫力の余韻に浸りながらテントの出口に向かった。
北方謙三著・林蔵の貌(かお)上・下 ― 2014年10月10日
北方謙三著「林蔵の貌(かお)」の上下二巻の単行本を読了した。林蔵とは江戸時代後期に樺太が島であることを発見し「間宮海峡」にその名を残した探検家・間宮林蔵のことである。北方謙三がこの林蔵を主人公とした長編の歴史小説をものにした。
壮絶な物語である。物語は蝦夷地という魅力的な舞台を中心にハードボイルドタッチでスピーディーに展開する。伊能忠敬、高橋景保(江戸幕府の天文方)、シーボルト、徳川斉昭(水戸藩主)、藤田東湖(水戸藩の学者)、川路聖謨(幕末の幕臣)、近藤重蔵(江戸後期の探検家)等の歴史上の人物が様々に林蔵と関わりながら登場する。史実を丹念に追いながら独自の視点と解釈で壮大な物語に仕上がっている。
間宮林蔵は農民出身の探検家にして幕府隠密でもあったという。物語はこの林蔵の探検家という側面以上に隠密としての側面を駆使して描かれる。幕末前夜の幕府内の一橋徳川、水戸徳川の抗争、朝廷の復権を目指す卓越した公家の志、幕閣を巻き込んだ薩摩藩主・島津重豪の野望といった筋立てが複雑に絡みながら展開する。
狩野信平という架空の人物が登場する。水戸藩士ながら蝦夷地とアイヌをこよなく愛し、酷寒の蝦夷に移住し開拓と起業を通じて蝦夷地の独立を夢見る。物語の「破軍の星」の奥州独立、「武王の門」の九州独立と同様に、作者の辺境の地と民への執着の果ての「夢」として描かれる「独立」が伏線にある。この北方作品の流れから言えば、物語の主人公は狩野信平である。蝦夷地独立の夢半ばにして物語の後段には命を落とす若者である。林蔵はじめ主要な登場人物に強烈なインパクトを与え敬愛される人物である。
北方太平記とは舞台を異にした幕末前夜という隙間の時代を描いた作者の慧眼に脱帽した。
壮絶な物語である。物語は蝦夷地という魅力的な舞台を中心にハードボイルドタッチでスピーディーに展開する。伊能忠敬、高橋景保(江戸幕府の天文方)、シーボルト、徳川斉昭(水戸藩主)、藤田東湖(水戸藩の学者)、川路聖謨(幕末の幕臣)、近藤重蔵(江戸後期の探検家)等の歴史上の人物が様々に林蔵と関わりながら登場する。史実を丹念に追いながら独自の視点と解釈で壮大な物語に仕上がっている。
間宮林蔵は農民出身の探検家にして幕府隠密でもあったという。物語はこの林蔵の探検家という側面以上に隠密としての側面を駆使して描かれる。幕末前夜の幕府内の一橋徳川、水戸徳川の抗争、朝廷の復権を目指す卓越した公家の志、幕閣を巻き込んだ薩摩藩主・島津重豪の野望といった筋立てが複雑に絡みながら展開する。
狩野信平という架空の人物が登場する。水戸藩士ながら蝦夷地とアイヌをこよなく愛し、酷寒の蝦夷に移住し開拓と起業を通じて蝦夷地の独立を夢見る。物語の「破軍の星」の奥州独立、「武王の門」の九州独立と同様に、作者の辺境の地と民への執着の果ての「夢」として描かれる「独立」が伏線にある。この北方作品の流れから言えば、物語の主人公は狩野信平である。蝦夷地独立の夢半ばにして物語の後段には命を落とす若者である。林蔵はじめ主要な登場人物に強烈なインパクトを与え敬愛される人物である。
北方太平記とは舞台を異にした幕末前夜という隙間の時代を描いた作者の慧眼に脱帽した。
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