ジェフリー･アーチャ－作品の再読４巻目は「百万ドルをとり返せ！」だった。作者ジェフリー･アーチャ－は１９４０年のイギリス生まれで現在８２歳である。２６歳でロンドン市議会議員に当選し、２９歳で最年少の国会下院議員に当選した。３０代に２度の総選挙で連続当選を果たした。３３歳の時に北海油田絡みの投資に失敗し全財産を失った。ところが３６歳の時に処女作であるこの作品を発表し大ヒットとなり、借金を完済する。その後は作家活動を続けながら政界復帰し、保守党副幹事長の要職を務めたりロンドン市長候補などにもなった。しかし自身のスキャンダルのアリバイ証言で偽証罪に問われ６１歳の時に実刑が確定し服役した。６３歳で出獄後は獄中生活の体験等をもとに多くの短編小説を発表している。
　少し詳しく作者の経歴を記述したのは、彼の豊かな才能故に招き寄せた波乱万丈に満ちた人生に驚愕したからである。政治家、実業家という分野での成功と失敗を重ねている。その体験の糧に豊かな執筆の才能を開花させている。「百万ドルをとり返せ！」は彼の処女作であり、直前の投資の失敗で全財産を失うという体験がベースとなっている。大物詐欺師と４人の専門分野の逸材たちとの間で繰り広げられる百万ドルの攻防を巡る物語である。バラエティ豊かな登場人物もまた作者の日常生活で巡り合った知人たちがモデルなのだろう。
　作者の数々の名作からすればストーリー展開の雄大さという点の物足りなさは拭えないが、処女作として読む限りその力量は疑いない。