朝霧の風景2010年10月01日

 雨上がりの朝だった。有馬川土手を北に向った。中国道の高架下をくぐった所から景色が変貌した。この秋一番の朝霧が、見慣れた景色を乳白色に染めていた。
 土手沿いに群生した彼岸花の咲いたばかりの瑞々しい花弁が、立ちこめた朝霧を背景にくっきり浮かんでいた。薄闇の中から「さくらやまなみバス」が国道176号線に現われた。名来橋の西のたもとをゆっくり走るバスの車体のピンクがひと際目についた。名来墓地横の畦道を東に向った。旧平尻街道沿いの稲田を眺めた。雑草の間に張られた蜘蛛の巣の真ん中で蜘蛛が空中に浮かぶように長い手足を広げていた。そのむこうで馴染みのある二本の木がぼんやりと佇んでいた。
 徐々に薄れていく霧の中で手で顔をぬぐった。口髭がしっとり濡れていた。ボリューム感を失った髪の毛の水気が伝わってくる。霧の中の散策は目に見えない水蒸気の海を泳いでいるようなものだと知った。