藤沢周平と北方謙三2016年02月03日

 リタイヤ生活に入って自分自身の精神世界に大きな影響をもたらしている二人の作家がいる。藤沢周平と北方謙三である。
 リタイヤを意識しだした50代後半から藤沢周平の作品を読み耽った。「三屋清左衛門残日録」という作品を読んだことがきっかけだったように思う。『日は残りて昏るるに未だ遠し』という「残日録」のタイトルの意味するところはリタイヤを控えた当時の心境にピッタリの言葉だった。隠居して間もない主人公の日々の営みは心惹かれるものがあり、自分の老後生活のイメージに重なった。
 ところが私自身の老後は、想定していた穏やかで静謐なものとは趣が異なった。リタイヤ生活に入る直前から、民生委員と大阪府労働員会労働者委員という二つの役職に就任したことが背景にある。3期6年の労働者委員は2年前に退任したものの、在任中は橋下大阪市長の不当労働行為事件なども担当し、現実社会の生々しい葛藤の現場に関わった。民生委員の役職も超高齢社会を迎えて地域福祉の現場で新たな枠組みづくりという生々しい活動の場に身を置くことになった。
 そんな時にふとしたきっかけで手にしたのが北方謙三の歴史小説「悪党の裔(すえ)」である。故郷でもある播磨地方に蟠踞した悪党の首魁・赤松円心(則村)を主人公とした作品である。 動乱の時代を志をもって生き抜いた男の世界を見事に描き切っている。以後、彼の歴史小説を読み尽した。
 個人的には地域福祉の現場で今、新たなステージを迎えようとしている。多くの障害や葛藤が避けられない。北方謙三作品がもたらしてくれる動機づけは貴重である。今しばらく北方作品を読み継ごうと思う。そしていつか藤沢周平の静謐の世界に戻りたいと思う。

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