団塊オヤジの地域デビュー ③故郷を語れない2009年02月07日

 団塊世代は、第二次大戦終結に伴って復員した父親たちによる婚姻と出生が集中した時期に誕生した世代である。その多くは地方の村社会で育ちながらも、戦後の民主教育の過程で従来の家制度の意識を希薄化させながら育った。核家族による家庭志向が強く、見合い結婚と恋愛結婚が逆転した世代である。彼らが親元から独立し、大都市近郊に職場を求め家庭を持つようになると、著しい住宅不足となった。その結果、大都市近郊には田畑や山林を開発して数多くの核家族向けの高層住宅団地や新興住宅街が造成されることになった。そんな団地や住宅街に移り住んだ団塊オヤジたちの多くは、仕事第一にサラリーマン人生を勤め上げ、地域と馴染む機会もないままリタイヤを迎えようとしている。子供たちも幼少期の大半をこの新興住宅街で育ち巣立っていった。
 私もまた故郷を離れ、歴史の街の一角に忽然と姿を現したベッドタウンに移り住んでいる。そんな私には、子供たちに彼らの故郷であるこの街をを語れない。新興住宅に住む多くの親たちも然りである。定年を間近に控えた頃から、休日の住宅街周辺の散策を愉しむようになった。散歩がてらに目にする豊かな自然と風景に限りない安らぎと郷愁を覚えずにはおれなかった。多くの人にこの地域の素晴らしさを知ってもらい、この自然の恵みをいつまでも護ってもらいたいと思った。これが今や私にとってのライフワークとなりつつある地域紹介サイト「にしのみや山口風土記」http://www.asahi-net.or.jp/~lu1a-hdk/yamaguti-hudoki.htmを立ち上げた主要な動機である。暇を見つけて史跡や名所を訪ね、地域の史書を読んでいる。やりがいのある楽しいひと時だ。同時にそれは、私にとっての新たな故郷づくりのいとなみなのかもしれない。わが街の子供たちに故郷を語る材料とツールを提供したいという想いもある。
 私が還暦を迎えた年に中学校の同窓会が開催された。「還暦記念同窓会」という刺激的なキャッチコピーの案内状は、「還暦」という節目の年をあらためて意識させることで、これを逃すと次はないのではないかという不安を抱かせる効果を与えていた。コピー考案者の巧妙な罠にまんまと嵌った私は、出席欄にマルをつけて返信した。同窓会当日に幹事のひとりである女性から、今回の同窓会のために幹事たちが数回打合せの場を持ったと聞かされた。「大変だった」という彼女の言葉の中に、それを上回る幼なじみ達との共同作業の楽しさが込められていた。故郷に今もとどまっていれば私も真っ先に手を上げたに違いない。そして本当の「ふるさと風土記」を立ち上げたに違いない。楽しかった同窓会は、故郷を離れたツケの支払いを味わったチョッピリほろ苦い場でもあった。とはいえ「ないものねだり」でない、手応えのある「新たな故郷づくり」に拍車をかける動機付けともなった。
 団塊オヤジたちも今や、「アラ還(アラウンド還暦)世代」となった。「還暦記念同窓会」で様々な想いを抱いた人も多いことだろう。リタイヤを迎え地域に戻った彼らにとって、終の棲家となった街の「新たな故郷づくり」というテーマは、豊かで充実した老後を過ごす上でも避けて通れないのではないか。

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