宮水学園(塩瀬)「江戸時代の天皇の即位について」2012年12月13日

 昨日、宮水学園塩瀬講座を受講した。講師は文化NPOなにわ創生塾代表の森田登代子という方で、テーマは「江戸時代の天皇の即位について」だった。
 住宅街のふれあい喫茶の催しがあったため、会場の塩瀬公民館には2時の開会直後に到着した。演壇では中年の女性講師の早口のスピーチが始まっていた。学者風の外観に似合わずその口調は「大阪のおばちゃん」そのものだった。ところが「私の娘は重度障害でした。今NHK教育テレビのバリバラという番組に出ていてチョッとした有名人です」と、いきなりヘビーでシリアスな話題が飛び出した(帰宅後、ネット検索して森田かずよさんという34歳の娘さんが二分脊椎症という障害を持ちながら番組で明るいトークをしていたことを知った)。講師の明るい口調の背後にある歩んできた道のりの過酷さを想った。
 天皇即位という講座のテーマはこれまで関わった分野からは思い切り遠いものだった。資料のひとつは、江戸時代の1611年(慶長16年)の後水尾天皇から1847年(嘉永元年)の孝明天皇までの14代に及ぶ天皇の即位式一覧表である。これに近世の天皇即位を解説した資料が配布された。
 皇位の継承方式には践祚(せんそ)という「前天皇の崩御」によるものと、受禅(じゅぜん)という「生前譲位」の二つがある。崩御後の即位が常識になった今日の認識とは異なる。事実、江戸期14代の内、10代は受禅である。また飛鳥時代から伝わる即位後初めての新嘗祭(にいなめさい:五穀豊穣を祈る宮中祭祀)である大嘗会(だいじょうえ)も、江戸中期の東山天皇の代に幕府の資金援助でようやく復活したという。古代には比較的多かったもののその後全く途絶えていた女性天皇が、江戸期になって明正天皇、後桃園天皇と二人も登場した。
 講師の説明で最も力が入ったのが即位式の絵図(貼付画像)の解説だった。江戸時代には庶民も即位式を見物することができた。絵図には男100人、女200人もの庶民が禁裏内の南庭で座って見物している様子が描かれている。子供が幟を揺すったり、母親が授乳している姿まで描かれている。見物人が殺到し死者や怪我人も出た。庶民には物見遊山のようなものだった。
 講師は桃山学院大学などで教鞭を取る近世庶民生活史が専門の学者でもある。絵図に描かれた庶民の目を通して天皇即位式を語ることが狙いだったようだ。今日の女性天皇問題についても「践祚が皇位継承の前提である限り避けがたいのではないか」とのコメントがあった。重度障害の娘を育て上げ、主婦としての庶民感覚を重視する講師ならではの発言と受け止めた。