長尾和弘著「『連携』で医療は劇的に変わる 」2016年09月16日

 在宅ケアに関わる書籍の7冊目を読んだ。長尾和弘著「町医者力④『連携』で医療は劇的に変わる 」である。尼崎の開業医である著者が日常の医療現場での出来事や実態をブログに綴った記事を書籍としてまとめたものである。従って記事のテーマは多岐にわたるものの、底流にあるものは医療再生に向けた地域での多様な職種、機能、機関の連携という点だろう。
 読み進みながらつくづく我が国医療の制度枠組みや施策の問題点を思い知らされた。超高齢多死社会を迎えてますます医療環境の整備が求められている中で暗澹たる気分に襲われた。その多くは医療と介護、医療保険と介護保険、病院と開業医と施設と在宅、創薬とジェネリック、行政区ごとの医療制度の壁等の連携や整合性の欠如に起因する。加えて「地域医療貢献加算」という国の愚策が地域医療の根幹を揺さぶっている。TPPの推進で世界に関たる国民皆保険の崩壊が迫っているという現実もある。
 今まで無縁の世界だった地域医療や医療行政という分野が俄かに身近で切実なものに思えてきた。ブログ形式の日常の医療現場からの発信がそのことをリアルに生々しく伝えてくれる。著者のもつ優れた発信力の賜物と言えよう。

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