英雄たちの選択「北条時頼」2022年04月09日

 2カ月ほど前に高橋克彦著「時宗・全四巻」を再読した。このブログでの書評で「時宗以上に時頼の偉大さを痛感した」と記した。その北条時頼が私がしばしば好んで観るNHKの「英雄たちの選択」に取り上げられた。「将軍か 執権か 鎌倉幕府・北条氏の戦略」というタイトルで描かれたドキュメンタリー・ドラマである。鎌倉執権体制を固めた時頼が、それを盤石のものにするため将軍職を、「自らが担うか」「天皇の親王を迎えるか」という選択を迫られたというテーマである。
 視聴してみて思ったのは、映像としての評価は別にしても時頼の実像に迫る内容としては物足らなさを感じた。作家・高橋克彦が文庫本2冊に渡って描いたその実像は多角的でリアリティに溢れた共感があった。文庫本2冊の著作にわずか1時間の番組が到底及ばないことは当然だろう。それにしても時頼を描くのに「将軍職を巡る選択」というテーマ自体が無理があると思った。時頼の評価はやはり鎌倉幕府の執権体制の確立と蒙古襲来に備えた国内態勢づくりにあると思う。
 切り口の違いが人物像の描写に大きく関わっていることを思い知らされた番組だった。