塩野七生著「ローマから日本が見える」2008年11月10日

 塩野七生著「ローマ人の物語」の文庫本愛読者にとって、毎年秋に3巻ずつ発行されるシリーズを読み終えると、無性に空虚さを覚えてしまう。ローマ帝国のその後の興亡を知るには1年後まで待たなければならないからだ。そんな気分の時、本屋の書棚で見かけたのがこの塩野氏著「ローマから日本が見える」だった。その400頁ほどの著作を読み終えた。
 ローマ誕生から初代皇帝アウグストゥスによる帝国の枠組確立までの歴史を、独自のテーマで整理しながらそのエッセンスがまとめられている。それを踏まえて著者独特の視点から著作のタイトルでもある「ローマから日本が見える」ことが語られる。主として「今日の「日本の混迷の要因」を古代ローマとの対比で解き明かし、混迷脱出に向けてその教訓を提起している。
 乱暴な感想を言えば、「ローマ人の物語」の著者による解説でありダイジェスト版と言える。それはそれで読み応えはあるのだが新鮮さに乏しいのは避けがたい。
 むしろ面白かったのは「特別付録・英雄たちの通信簿」である。冒頭でイタリアの普通高校の歴史教科書の次の文章が紹介される。
 「指導者に求められる資質は、次の五つである。知力。説得力。肉体上の耐久力。自己制御の能力。持続する意志。カエサルだけが、このすべてを持っていた」 
 そしてこの五つの資質をもとに著者がつけた古代ローマの指導者28人の通信簿が紹介されている。ちなみに満点はカエサルとアテネの黄金期を創りあげたペリクレスである。以外にもアレクサンドロス大王は、アウグストゥスやハドリアヌス、トライアヌス、ハンニバル等の後塵を拝して7位である。33歳の若さで死亡したことの「肉体上の耐久力」、深酒だったことによる「自己制御力」の減点が大きいと指摘される。
 オバマ次期大統領や麻生首相など現代の指導者の通信簿は何点なのだろう。

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