ノーベル平和賞の勇気ある警鐘2010年10月09日

 ノーベル平和賞に中国の民主活動家、劉暁波(りゅうぎょうは)氏の受賞が発表された。「人権と民主主義という国際社会の価値観を共有しないまま、中国が超大国への道を走っていることへの強い警告の意味がある(読売新聞)」という報道もある。同感だ。
 冷戦時代の資本主義と社会主義というイデオロギー対立がソ連崩壊とともに終焉した。民主主義と不可分の市場経済が最終的に勝利したと受け止めた。それは欧米式民主主義経済体制ではあっても、人権尊重と経済発展という普遍性のある道筋を示していたと思う。
 近年の中国はそうした流れに真っ向から挑戦しているかに見える。経済体制は市場経済を大胆に導入しながら政治体制は共産党独裁を頑なに維持している。しかもそれが現状では着実に成果をおさめ、今や超大国にまで迫ろうとしている。行き過ぎた市場経済には民主主義の洗礼を受ける政治体制が抑制機能を発揮する。中国式「開発独裁」「国家資本主義」は、市場経済のうまみだけを享受し国際社会のルールを顧みない。逆に中国は自国の巨大な市場をカードに国際社会の批判を封じ込めようとする。今回の受賞についての欧米各国のコメントにも及び腰の感がある。尖閣列島問題でこじれた日中関係の修復を念頭に置く我が国の首相コメントも然りである。
 中国式経済発展方式はアフリカなどの開発途上国に波及しつつあるという。金融危機で深刻なダメージを受けた多くの市場経済の国々に、中国への羨望と民主主義への懐疑が広がりつつあるともいわれる。中国の挑戦と成功は、民主主義と経済発展という今日の人類の到達点を脅かしかねない危険を孕んでいる。ノーベル賞委員会は事前の中国政府の圧力にもめげず、そうした危機についての勇気ある警鐘を鳴らした。

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