忍び足の秋2012年08月08日

 早朝の散歩道を歩いていた。心地良いヒンヤリ感の中にかすかな肌寒さをかぎ取った。いつものあれほどかしましかった蝉の声が、心なしかトーンダウンしている。突然背後から慌ただしげな蝉の羽音が襲った。と思ったら、力尽きた一匹の油蝉が目の前の舗道に仰向けに転がった。最後の力を振り絞った羽ばたきで最後のあがきを続けている。殻を破って飛び立ってからの短い一生を今終えようとしている。盛夏の季節に忍び込んだ秋の気配を見た。
 住宅街麓の市民農園にやってきた。成長した稲の苗の鮮やかな黄緑が眩しい。すぐ傍の水路を流れる有馬川から枝分かれした清らかな水流に目を奪われた時だ。そのすぐ上の緑の葉に隠された稲の粒子に初めて気がついた。成長した苗田とばかり思っていた水田には稲穂を宿した稲田の装いを開始していた。
 名来橋を東に折れた旧丹波街道に合流する農道にやってきた。南側の丘陵地麓に幾本かの野生の栗の木が茂っている。濃い緑の葉っぱの中に若々しい黄緑の栗のイガが朝日を受けて輝いていた。
 お盆前の盛夏の季節にも、いつのまにか秋が忍び寄ってきていた。