台風と子ども心2013年10月16日

 10年に1度と騒がれた大型台風が、今日未明に少なくとも我が町周辺は何事もなく過ぎ去った。6時前に、不気味な黒雲に覆われて薄暗い散歩道を歩いた。時おり身体をすり抜ける強風が台風の余韻を残していた。
 幼い頃、台風は子ども心にある種のワクワク感をもたらしていた気がする。家の中という安全地帯に籠って外で吹き荒れる恐ろしげな台風に何とも言えないときめきを覚えたものだ。古い建付けの悪い木造平屋の家屋だった。建付けの悪さが強風にあおられていやでガタガタ、ヒューンヒューンと雨戸や壁板に唸り声をあげさせる。屋根や壁を打つ雨脚の猛烈さも猛烈であるほど怖いもの見たさの趣きがあった。台風来襲前に親たちがあちこちを釘を打ち付けたり、縄や針金で縛ったりしていた姿が懐かしい。
 今回の台風26号で伊豆大島では多数の死者も出たようだ。そんな被災者の気持ちを考えれば、こうした幼児の能天気な思い出を呟くのも風水害被害を体験しなかった者の不謹慎な戯言というそしりを免れまい。それでもやっぱり60年ほど昔の台風にどこか牧歌的な雰囲気があったことを思わずにはいられない。